野菜スープうどん
シベリアからの寒気の影響による小雨や吹雪で外出しづらい日が続いています。皆様あけましておめでとうございます。新年いかがお過ごしでしょうか。
大晦日に赤いパンツをはく話をしましたが、もうひとつ思い出しました。年が明けたのに年越しネタで引っ張るなと言われそうですが、これを書いている時点でまだ12月29日で年末モードなので許してね。
イタリアには年越しにレンズ豆を食べる習慣があります。レンズ豆はその名の通りレンズのように丸い豆で、柔らかく煮てコテキーノという豚のソーセージに添えていただきます。丸い形がコインにも似ているので、食べると翌年の金運が上がると言われているのだそうです。
大晦日に縁起物を食べる習わしって世界にあるんですかね。数年前、日本の年越しそばの話をしたら
「親戚が集まる時にやってみようぜ!」
となったので、材料を調達しにフィレンツェの某有名アジア食材店に行きました。アジア系の食材が必要なときは救世主のような存在のこのお店、しかし蕎麦は Made in どこなのか分からない怪しいパッケージのものしか置いてないんだなこれが。
かつてマリー・アントワネットは言いました。
「蕎麦がないなら、うどんを食べればじゃない」
よし、年越しうどんにしよう。
おいおい、またメシマズエピソードかよって?
いやいや、異世界ならぬイタリアで和食無双の話ですよ。
海外で和食にトライする時、まず立ちはだかる壁が出汁です。顆粒だしは手に入るけど結構なお値段。けど、そもそもイタリアではそういう化学調味料を敬遠する人が多いです。何が入っているか分からないから。
日本でポピュラーなコンソメスープの素もそう。東京で一人暮らしだったとき必需品だったのでこちらでも常備しておいたら、同居人に眉をひそめられました。「僕が食べるものにはこういうものを入れないでね」とまで言われたよ!
ネットには海外生活者向けの出汁の代用法がいろいろ載っています。なんとケチャップが出汁の代わりになるらしいですよ。けど、ケチャップは上の理由で使えないし、魚を煮るとか慣れないことをやるとどうせ大惨事になります。
軽い気持ちで盛り上がったことをこの辺でもう後悔しはじめてましたね。
試行錯誤の末、ニンジンとズッキーニとショウガとハーブを煮てスープを作り、醤油と酒を加えてめんつゆの代用にすることにしました。
出汁をクリアーしたところで和食無双への第2の関門が。それはイタリア人が食に関して保守的だということです。
私の半径5メートル程度の狭い範囲の観察では、イタリア人、特に年配の人は外国のよく知らない食べ物を基本的に食べません。ハンバーグやパスタや麻婆豆腐など各国の料理が普通に食卓にのぼる日本とはだいぶ事情が異なります。地元の伝統料理がいちばんで、それ以外は食べないといっても決して大袈裟ではありません。
アメリカナイズされた日本の食卓は奇異に映るらしいです。自国の料理があるのになぜ西洋の料理を採り入れるのか? と。知らんがな。
イタリアンおばさまおじさまズに年越しうどんを提案したところ、「味見する程度なら……」という消極的な感じだったので、うどん一束を十数人で分けることに。
結果、1人2本くらい(笑)。
野菜スープうどん、評判は悪くなかったです。でも期待に反して「おいしー!」という反応はもらえませんでしたね。がっかり。うどんは米でできているので崩れやすいのかと思ったけど意外とコシがある、との感想もいただきました。自分としては、優しいお味でそれなりに美味しいけど、塩分が強い和食の味に慣れているので物足りなかったです。
というわけで新年「イタリアで和食無双したらなんか微妙な反応だったよ」をお送りしました。
異世界に和食を普及させようとする転移者の方々は、材料調達とは別の文化的な面で色々苦労するんじゃないかと思ったり。
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