第2話 【死神】

   ── 2番目の扉へようこそ ──



 とあるバラエティー番組を見ていた時の体験です。

 

 時の人気者たちがクイズや罰ゲームに興じ笑いを取るような、内容的にはありふれた番組でした。

 が、陽気なその画面の中に突如、あまりにも不自然で違和感のある"嫌な感じのもの"が現れ、私の目は瞬時、釘付けになりました。


 他のタレントさんのギャグに大笑いをする笑顔の人気タレント──嫌みのない明るさと面白さ、そして優しさを兼ね備えたその人のことはおそらく日本中で知らない人はいなかったと思います。

 

 爆笑するその上半身がアップになりました。

 その時──

「え?!」

 思わず凝視しました。

 その人の背後に2回りほど大きな"真っ黒い何か"がいます。

 明るく白っぽい背景だったはずが、真っ黒──


 ゾッとしました。

 時間にしてみればほんの一瞬と思いますが、明らかにあり得ない映像です。

(この人、大丈夫かな・・・・)

 何かとてつもなく嫌な感じがし、しばらくその映像が頭から離れませんでした。


 それからしばらくして、Bという友人と電話で話をしていた時、たまたまつけていたテレビ番組にまたそのタレントさんが出ており、チラリと見ながら「そういえばこの間、テレビで◯◯を見た時に変なことがあって──」と口にした途端、「あ!」と、Bが声をあげました。

「え、何?」

「◯◯、危ないよね!」

「?!」


 実は彼女は霊感が強く、いわゆる"見えてしまう"系の人なのですが、その時の「危ないよね!」にはいつになく力が入っており、そうとう何かを感じたのだということが分かりました。

 そこで私が過日に見たモノの話をすると「それ、死神」とスパッと言い、「あの人、危ないよ」と、さらに言いました。


「死神?!」

「間違いない」

「何で分かるの?」

「その番組って△△じゃない? 見たよ、私も」

「真っ黒いモノを?」

「いや、私が見たのはもうちょっとリアル」

「どんな?」

「黒マントに大鎌。いわゆる死神スタイル」

「え・・・・」


 なんと彼女はあの日、同じ番組の同じシーンで、私が見たモノよりさらに具体的な形を目撃していたのです。


 そして、それから約1年後、世間は大騒ぎになりました。

 その人気タレントさんの急死──

 あまりに若く、あまりに残念なその急逝に日本中が驚き悲しみ、追悼番組や特集が幾つも放送されました。


 その騒然たる騒ぎを目にしながら、やはりあれは死神だったのだと、あらためて恐ろしさを感じたと同時に、1年も前から死神が憑いていたということは、やはり抗えない寿命だったのか・・・・と、そんな風にも思いました。


『やっぱり、だったね』

 その訃報の直後にきたBのメールからは複雑な思いも読み取れました。

『遠い存在の人の死神が見えたからって助けられるわけじゃなし、身近だとしても「死神憑いてるよ」なんて言えないよね、なかなか・・・』

 もっともだと思いました。


 ならばハナからそんなものは見えない方がいい、知らなくていいことは世の中に沢山ある──

 

 つくづく思わされた出来事でした。



 それではまた次の扉でお会いしましょう。


 




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