第26話 過ぎし幾多の

「マモルにーっ!覚えてなさいよぉっ!」


周りのお姉さんに観られながらエイミーは空に叫んだ・・・





 雲の切れ間を飛ぶ十数機の機影が見えた。


「指揮官機が、バンクを振った!」


OPL照準器に乗っかった獣耳娘が振り返る。


「了解!レイ」


前方を注視したヒカルは戦闘諸元を確認する。


機首上の7ミリ7機銃の装弾を確認し、両翼の20ミリ機銃に眼を配ると、


「小隊長機が増槽を落とした!」


レイの叫びで、自然と右手が給油コックを切替て・・・



  ガクン



指揮官に併せて自分も増槽を切り離した。

途端に機速が増速する。


「1番機に続行する!」


ヒカルが機首を持ち上げて上昇に移った。


中隊9機が編隊のまま上昇し、敵機の死角たる後上方へと回りこむ。


「まだ・・・敵編隊に異常な動きは観られない。気付いていないな・・・」


レイが言った通り、濃い青色の機体を直進させる敵編隊に気付かれた兆候は見れない。


「このままじっとしていてくれれば・・・第1撃は奇襲で終えれるな」


ヒカルも敵機の動きを確認しつつ、小隊長機の右後方に占位する。


太陽の位置を考えればあまり高度差を付け過ぎると被発見される惧れがあった。


「もう・・・そろそろ・・・かな?」


前方を飛ぶ指揮官機に注目した時。


「突撃!指揮官機が突入するぞ!」


レイが戦闘の開始を告げた。



  グイッ



操縦桿を押し込んで降下に移るヒカルにも漸く敵機の正体が解った。

それはレイも同じだったのか・・・


「敵はP-36と40の混成部隊!空冷と液冷の違いだけだけどな!」


それは大きく違う性能差を意味してもいた。


  

   ギュウゥーンッ



もし、地上から観ていたとしたら。

漫然と飛んでいた戦闘機編隊18機の上から、9機の<零戦>が降って来たように観えただろう。



「指揮官機一機撃墜!」


レイが火を噴き墜ちていく機影を確認した。

そして目の前に居る敵機目掛けて叫んだ。


「墜ちろ!」


ヒカルの左親指が20ミリ切替スイッチに伸び、全銃一斉射位置に併せた。



 ドドド! タタタタタッ!


20ミリの重い射撃音と7ミリ7の軽快な射撃音が短く轟いた。


狙ったP-40ウォーホークに20ミリ機銃弾が突き刺さり、

7ミリ7で上面を穴だらけにされた機体から火の手が噴き出す。




  バガッ!



まるで音が聴こえたみたいに目の前で右翼がし折れた機体が錐揉みに入る。


「撃墜・・・」


ぼそりとヒカルが呟く。


次の敵機を探したヒカルは、もはや空戦が終った事に気が付いた。

たったの数十秒・・・

たったそれだけの時間で。


「敵機撃墜6機・・・後はダイブして逃げ出した。もう追い掛けても間に合わんよ」


レイが逃げ行く機影に眼を凝らしてヒカルに教えた。


「ふうぅっ」


停めていた息を吐き出すように、一合戦終えられた事にほっとしたら。


「ヒカル・・・集合合図だぞ」


レイが指揮官機のバンクを見つけて教えた。


「うん・・・了解!」


小隊長機の右後方の2番機位置へ戻った<零戦>には、まだ復路用の燃料も弾薬も十分残っていた。


「まだ・・・墜とし足らない・・・まだ闘い足らない・・・」


ヒカルは敵機を求めて索敵を続けた。


「ヒカル・・・まだ。気に病んでいるのか?」


レイが心配そうに訊いた。


「・・・・」


答えを返さずにヒカルは廻りに眼を配り、


「そう・・・ね。私は彼等の分まで闘わねばいけないの・・・」


誰に応えるでもなく、そう呟いた・・・







_______________







「元気そうで善かったわ・・・ヒカル」


青いフィフススターの将官服を着た女性が、壇上に登って話すヒカルへ視線を移した。


「彼女が?叔母様・・・」


同じ金髪の少女が女性将官に訊ねた。


「そう・・・彼女が<零戦虎徹>の異名を執る・・・中嶋ヒカル」


「・・・あの方が・・・あの娘のお母様・・・」


金髪の2人が講堂の隅で話し合っていた・・・ヒカルを見詰めて。

戦時下であれば、敵国人だったであろう2人の女性が、壇上に昇った翔騎を見詰めて。


「あれから・・・17年が経とうとしている・・・」


「私が生まれる前の事ですね、叔母様」


年若き乙女が訊く。


「そうよランナ。ランナ・バルクローン・・・」


翔騎を見詰め答えた女性将官が振り返る。


「はい・・・ワスプ少将。山猫のヘルキャット・・・」


ランナはフィフススターの将官に頷いた。


壇上に昇り、居並ぶ生徒達に会釈したヒカルの眼にはが写っていた。


「ヒカル・・・あなたも?あなたもなのね・・・」


悲しみに似た表情を浮かべるヒカルと同じ様に、ワスプも普段の明るさに似合わず真剣な貌となった。


「?」


ワスプに振り向いたランナが不思議そうな顔で見詰めていた。




ー 私は・・・この子達に話せるのだろうか?

  話しても良いのだろうか・・・


ヒカルは壇上で、頭を過ぎる過去の出来事を思い出しながら考える。


ー 私の話を聞いて貰えるのだろうか・・・真実の戦場というモノを・・・


居並ぶ生徒達を前にして今更ながら戸惑いを隠せないヒカルだった・・・






ヒカルの講話は何を教えられると云うのか?


闘いの真実は、何を告げるというのか?


今、紐解かれる戦争の真実


次回 第27話 2つの国


君は真実を語れるのか?

次話から新展開になります!


そう、やっと本当の<サンシャルネス>と<フィフススター>の戦争部分へと突入していく事になります。


そう、ヒカルが生き残った空の闘いへと。


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