第24話 マモルのお願い?
エイミーは朝早くからそわそわしているヒカルを観ていた。
そわ そわ
「・・・」
エイミーはヒカルを観て、またため息を吐いた。
「ヒカル。少し落ち着いたらどうだ?」
見かねた勲がうろうろするヒカルを停めたが。
「あなたこそ・・・何杯お茶を飲む気なんですか?」
両親の落ち着きの無さに、見かねたエイミーが。
「お父さんもお母さんも。お兄ちゃんが帰ってくるからって・・・落ち着いたら?」
2人を咎めたのだが。
「エイミー、お前も・・・たいがいだぞ?」
勲が反対に言い返してくる。
「?」
小首を傾げたエイミーにヒカルが言った。
「その恰好でマモルに逢う気なの?エイミー」
<!?>
気が付いた。
自分がパジャマ姿のままなのを。
「あわわっ!?私とした事が!」
エイミーは慌てて二階の部屋へ駆け戻る・・・着替えに。
そう。
今日は堀越家にとって、とーっても楽しみな日。
防衛学校に寄宿しているマモルが休日を利用して、還って来る日なのだ。
朝早くから起きて来たヒカルは用も無いのに掃除を始め、
勲は玄関に近いリビングでそわそわしていた。
朝ごはんを食べようと起きて来たエイミーは両親の
ー マモル
少しは大人びて帰って来るのかなぁ?
顔を洗いながらエイミーは優しい兄の顔を思い出しながら考えた。
ガララッ
玄関を開ける音がする。
続けて聞こえたのは・・・
「お父さん、お母さん。ただいま」
マモルの声がしたと思ったら。
ずざざっ!
ヒカルも勲も、エイミーさえも玄関に駆け寄った。
「ただいま・・・おかあさん」
笑顔で敬礼する制服姿の青年。
「あ・・・」
3人は眼を疑った。
「マ・・・マモルだよな」
「マモル・・・見違えたわ・・・」
勲もヒカルも、我が子がすっかり大人びて還って来た事に声を詰まらせて感動している。
「マ・・・マモルにー・・・超カッコいい」
3ヶ月前に別れた時と、別人の兄がそこに居た。
「そうかい?制服がそう見せているだけだよ」
朗らかに微笑む兄に、エイミーはドギマギするばかりだった。
「マモルおあがりなさい、朝ごはんは済ませたの?」
ヒカルが急き立てる様に促すと、
「朝は済ませてきたんだ。母さん達は?」
靴を脱いでヒカルに尋ねるマモルに、
「いいのいいの!それよりマモルにー。学校どう?楽しい?」
エイミーが軍隊の学校の事を訊ねてみた。
「まあね。そっちはどうなんだい、エイミー?」
靴を脱ぎ揃えて立ったマモルがエイミーの頭に手を置いて聞き返してくる。
「うーん。まあ、それなりに・・・ね」
頭を撫でられたエイミーが僅か3ヶ月で別人となった様に思える兄に照れて俯いた。
「ふーん、エイミーにしては謙遜しているなぁ」
微笑む兄は、前よりもっと優しく思えて、エイミーは胸アツになる。
「2人共、玄関で話していないでリビングで話したら?
お茶菓子持っていくからね」
「うん。マモルにー、行こ」
ヒカルの声にエイミーがマモルの手を曳きリビングへと入った。
「そうなんだぁ・・・凄いね、救難訓練って。
そんな大切な仕事をこれから務めていくんだね、マモルにーは・・・」
眼をキラキラさせたエイミーが見詰める。
「本当だな。翔騎の仕事も変わっていくんだなぁ・・・なぁヒカル」
「素晴しいわね、マモル。そんな大切なお仕事勤められるなんて・・・
誇りに想うわ・・・お母さん・・・」
ホロホロ感動して涙を溢れさせるヒカルに、エイミーは溜息を吐いてから。
「じゃあ、マモルにー。学生生活が終ったら実施部隊に配属されるの?」
頷いたマモルが、
「そうなるかな・・・多分」
少し考えた後、付け加えた。
「エイミーが卒業するまでは部隊に配属されたくはないなぁ。
妹と一緒に空を一度でいいから、飛んでみたいなぁ」
3人を前にして想いを打ち明かした。
「お・・・おにぃちゃん・・・」
紅く染めた頬をしたまま・・・兄の顔を見詰めた。
「それが約束だったじゃないか。エイミーの願いだった筈だろ?」
そう言われて益々紅くなるエイミー。
ー 嬉しい・・・けど。恥ずかしいな・・・
それが他人じゃなく実の兄だからこそ、尚更恥ずかしく思えるのだった。
「それで?電話で話していたお願いって?
私とエイミーに何を頼みたいの?」
ヒカルが話を切り替えて、エイミーに助け舟を出すと。
「ああ、その事なんだけど・・・
お母さんに頼みたいんだ、学生達に昔話をして貰いたいんだ。
生きる為に闘った友との話を・・・戦争の愚かさを。
辛い事かも知れないけど・・・僕達に命の大切さを教えて貰いたいんだ」
マモルが真剣な顔でヒカルに願った・・・
マモルが願った事は、闘いの思い出に苦しむヒカルにとっては辛い事だった。
だが、ヒカルは意を決して息子の願いを呑んだ。
一方エイミーにもマモルは頼み事を言ってきたのだが・・・
次回 第25話 そんなの聞いてないよぉ
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