第23話 夏季休暇へ

明日から始る夏休み。

期待とは裏腹に、やる事が見つからない・・・エイミーには。




「中間練習課程も全員が終えられる事となったのは、皆の努力あってのことだ」


ホームルームで、土浦教官がプリントを配りながら話す。


「今渡したプリントには、お前達が希望する専修課程を記入して欲しい。

 我々教官が各個の意見を出して、総合判断を下す時に参考とする。

 だが、希望通りとは行かないかも知れん事だけは解って貰いたい」


諭す様な口調で土浦が教えると、


「教官、専修課程にはいつから入るのですか?」


カンが休暇明けかと期待を込めたが。


「うむ・・・夏季休暇明けには、提出してくれ。

 その後に選定し、人数分けを行うから早くても2学期からだな」


プリントを配り終えた土浦が答えて、


「休み呆けして来ないように務めるんだな」


笑いながら注意を与える。

皆が配られたプリントに目を通しているのを確認した時、チャイムが鳴った。


  


   キンコンカンコーン




「うむ。では明日からの夏季休暇で家に帰る者は事故に遭わない様。

 それから飛空士学生としての節度ある振舞いに留意しておくよう・・・以上だ」


土浦が皆に言い聞かせる。

学生が起立し土浦に終了の挨拶を送り解散となる。


途端に教室内がザワつく。


「ふわぁ・・・これで2週間の休みに突入だ!」


漢が背伸びして言うと、


「久しぶりに実家に帰れるわ」


リョビが喜ぶ。


「そっか、殆ど皆寄宿舎生活だったモンね」


エイミーが2人に話し掛ける。


「家に帰れるのって嬉しいよね」


家から通学していたエイミーには2人の友達がどれだけ嬉しい事なのか、

想像出来なかったから、訊いてみるとリョビが頷いて。


「エイミーも2学期からは寄宿舎に入るんだから・・・家も近いのにねぇ・・・」


2学期からの生活を教える。


「そうだよね、まあ・・・エイミーは実家が近いから。

 直ぐ帰れるからいいよな。僕達は帰るって言っても、片道一日がかりだからさ」


漢が話しに割って入ってくる。


「そうだよねぇ・・・私って恵まれてるよねぇ・・・」


2人の話にエイミーがシミジミと言う。


「あはは、でも2学期からの生活に備えておかないと。

 ・・・ホームシックになってしまうかも・・・」


苦笑いするエイミーを2人はジト目になって、


「エイミーに限って、それはないわ」


完全拒否した。





____________





「夏休みかぁ・・・どうしよっかなぁ・・・」


着替え終えたエイミーがタンクトップとホットパンツ姿で、

縁側に座って夕日を観て想いを巡らせていると・・・


「エイミー、のんびりしている暇は無いわよ。

 先ずは2学期から始る宿舎生活の必需品を用意しないと」


ヒカルが麦茶を持って来ると、心配そうに言ってくる。


「もう。お母さんは・・・

 私が宿舎に入るのに、お母さんの方がそんなに心配してどうするのよ」


おろおろするヒカルに、エイミーが呆れて言ってやると。


「だって、エイミーは女の子なのよ。

 マモルとは違って、必要な物も多いから・・・」


落ち着かない風に、あれこれ考えてしまっているヒカルに、エイミーは笑いかける。


「そんな・・・どこか余所の国に往く訳ではないし。

 学校からも近いんだから。

 いつでも帰れるんだから・・・心配ないよお母さん」


逆にエイミーがヒカルを落ち着かせる。


「そ・・・そうね。

 私っておっちょこちょいだから・・・何か大切な物を忘れる事があるから。

 エイミーも必要な物があるなら早めに言っておいてね」


自分の事を心配しているのかと、改めて呆れてしまう娘であった。


「はぁ・・・私ってやっぱりお母さんの娘なんだって、思うよ」


肩を窄めて呟いたエイミーに、さっそくヒカルがやらかす・・・


「そうそう! 明日の日曜日にね、マモルが帰って来るって。

 さっき、電話があったのよ」


「え!?お兄ちゃんが!」


エイミーがヒカルの一言で飛び上がる。


「ホント?お母さんっ、お兄ちゃんが帰って来るの?」


エイミーの驚きぶりに、ヒカルが引き、


「えっ・・・ええ。一日だけ、だけどって・・・」


戸惑う様に教えると、エイミーは一目散に自室へ駆け込んだ。


「あらまぁ・・・エイミーったら。あんなに喜んで」


ヒカルが自室の中に駆け込んで行ったエイミーに、微笑みかけた。


   

  バタンッ



ドアを閉める。


そして部屋内に眼を向ける。


「か・・・片付けなくっちゃ・・・」


散らかしっぱなしの部屋内を見回して、エイミーが冷や汗を垂らした。



夏の夕日が差し込む室内は、まだ暑さが抜けていなかった・・・






突然帰宅すると言うマモルに、一家は騒然となる?


まあ・・・片付けたし・・・安心でしょ?


ほぇ?そんな!?嘘でしょ!


次回 第24話 マモルのお願い?


そんなーっ!お兄ちゃん!出来ないよぉっ!←エイミー


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