第7話「彼方から」
高級料理がズラリと並んだテーブル。
その料理をガツガツと平らげていくシーリンとミィナ。
アルガスは酒をチビチビと飲みつつ、伝票を見て頭を抱える。
「ほんでな? くっちゃくっちゃ……、アタシはゆーたんよ! 大猪くらい、丸々食ーたるわって」
「ふーん? もっきゅもっきゅ……」
キラキラした目でシーリンの話に聞き入っているミィナ。
「そしたら、アホのロリコン野郎が、本当に持って来よってん、ちゃっくちゃっく……、食うたら見逃したるって、」
「うんうん! くっちゃらくっちゃら……」
………………………………うん、君らね。
「がははは、食ーたったわ!……にょっくにょっく、オカワリでもう一匹もペロリとな げはははは!!」
「すごーい!……ぺっちゃぺっちゃ」
…………はい、堪忍袋の緒がぷっちーん。
「───じろ」
アルガスがボソリと一言。
「あん? なんやねん?……もっしゃもっしゃ、何か言うたかアルガスのオッサン」
「どうしたのー?……くちゃくちゃ」
すぅぅ……。
「─────……口を閉じて食えぇぇぇぇぇぇええええええッッ!!」
ガシャーーーン、パリン、どかーーーーん!……ぷぅ。
「びびびびびび、びっくりしたやん! 何いきなりデカい声出しとんねん!?」
「びっくりしたぁ……!」
シーリンは椅子ごと、後ろにひっくり返りその拍子にテーブルを蹴倒していた。
ミィナちゃんもひっくり返って、頭からピザを被っている。
「はぁはぁはぁ……! 口を閉じろ、口をぉぉお!!」
「な、な、何言うてんねん? アンタが食いながら喋れ言うたんやん!」
シーリンが「いタタタ……」と尻をさすりながら起き上がる。
「アホォ! 限度があるわ、限度がぁあ! それに
「えー……でもぉ」
なぜかミィナもアルガスに反抗。
シーリン側についているし──。
「でもも、だっても、テロもクーデターもない!! くっちゃくっちゃ、ぺっちゃぺっちゃ、うるっっさいわ!」
口を閉じて食え、口をぉぉおおお!!
「───口を閉じたら食えんわ、アホォ!」
「誰・が・ア・ホ・じゃ、俺が言ってるのは、噛むときに口を閉じろって意味だ!」
──
ったく……。
どんな教育受けたらこうなるんだよ。
親の顔が見て見たいわ。
「大の男が小さいことでぐちぐちと、うるさいやっちゃな~……。ミの字は、こんな奴とよー付き合えるな?」
「アルガスさん、良い人だよ?」
シーリンは呆れた顔をしつつ、パンパンと埃を払いながら、起き上がりざまに床に落ちてしまったピザをペロリ。
それを真似して、ミィナもパクリ。
「───拾い食い、すなッ!」
ごん、ごん!!
と二人にゲンコツを落とすアルガス。
「はぶぁ!」「へぶぅ!」
二人して顔面大爆発。
「いったー」「いたぃ~」
あーもう。託児所かここは!?
「すぐ殴るなや……。ウチの地元じゃ、3秒以内はオーケィやねん」
どんな地元だよ!!
「知るか、アホ! ミィナもこいつの真似をするな!」
「はーい」といってシュンとするミィナ。
この子は素直だけど、周りに流されやすい。
シーリンと出会ったのだって、露天で店主に騙されてお菓子を試食しまくったがばかりに、そのついでに買えと言われて、泣きべそをかいていたそうだ。
そこをシーリンが通りがかり、見兼ねて助け舟を出したというのが顛末だ。
この調子で店主と交渉し、逆にオマケまで貰ってキャッキャウフフとしている所に、ミィナが単独で行動していると聞いて、保護者に一言いってやるとばかりに、アルガスに怒鳴り込んできたらしい。
いや……。
まぁ、目を放した俺も悪いんだけどさ。
「コイツて言うなや。ったく……。食い方ひとつでうるさいやっちゃな~」
給仕がジト目でアルガスを睨みながら床を掃除しているのをいいことに、さらに追加注文するシーリン。
ちゃっかりと、さっきよりも高いのを注文してやがるし……。
まぁ、テーブルが空っぽになったし、良しとしよう。
それよりも、このタイミングで聞かないとな。
「で、これをどこで受け取った?」
アルガスがいう、コレ。
もちろん手紙のことだ。内容は完結明瞭。
リズの字で間違いない。
内容は、これからそっちに向かうので、その場所で待っていてほしいというものだ。
それ以上のことは何も書かれていない。
…………リズにしては言葉が少なすぎる。
そこに、違和感を感じたアルガス
しかも、1H5Wで内容を書けという風にアルガスはリズに教えていたはずなのだが……。
「ふん……! それが人に聞く態度か」
腕を組んで踏ん反り還るシーリン──……。
「すまん。謝るから、教えてくれ」
「ッ……! え、えらい素直やん。……ち、調子狂うわ」
うるさいッ。
リズのためなら…………頭くらい何個でも下げてやるともさ。
「む、むぅ……。わかったから、頭あげぇ──。…………はぁ、まったく」
ポリポリとばつが悪そうに頭を掻くシーリン。
「……アタシが普段活動しているのは、リリムダっちゅう街や。……ちょうど、この荒野を挟んだ向かいの街やな」
トントンッと、
シーリンが、ギルドに掲げられている周辺地図を指さす。
……なるほど、たしかにかなり離れた場所にリリムダの街の名前が見て取れる。
──……リリムダ、か。
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