第20話「ミィナ搭乗!!」

「あへへへへ……」


 真っ白に燃え尽きたセリーナは放置。


 さて……、

 ギルドマスターと盗賊ギルドはぶっ飛ばした!


 ならば──────……。



 ……次は、代官ッッ!!



 そうして、アルガスは顔を上に向ける。


 ボロッボロになった一階はほとんど更地だが、さすがにこの巨体では階段を上れない。


 だが、分かる。


 もう見ていた──────。


 もう、見えているぞ!!

 これくらいの建物ならどこをどう逃げたのくらいわからいでかッ!!


 ……代官の部屋がどこで、ミィナがどこにいたのかを考えれば────ッ!


(ここだぁぁああ!!)


 ゴゴゴコココォン……。


 顔を向ければ砲塔の仰角が上がっていく。

 そして、主砲同軸機銃MG34を指向すると──。


『返してもらうぞ! 悪徳代官ッッ!!』


 ドコココココココココココココココココココココココココッッ!!


 激しいマズルフラッシュが闇に沈む屋敷の中でギラギラと輝き、明るく照らし出す。


 そして、射線の先は天井部分!! もちろん、領主がいるであろう部屋を真下からぶち抜いているのだ!!


 ドコココココココココココココココココココッッ!!


 アルガスが発砲し、天井に向けて丸ーく銃痕が開いていく。

 それはまるでミシンでも縫うかのように──!


 そして、ボコボコ! と、銃弾による大穴が一周まわって天井をくりぬいたかと思うと──────。


 ミシ……。

 ミシミシミシ……!


 あけた穴に耐え切れず、上階の床が────……。。


 メリメリ、バリ──……ドッカーーーーーーン!!!


 ……ついに床が抜けて、上階がズドンッと落ちてきた!!


『どうだ!! 床板の型抜きかたぬきじゃーーーーー!』

 楽し気に叫ぶアルガスと、


 そこに──。


「ぶ、ぶひぃぃぃぃぃいいいい!!」

「きゃぁぁあぁぁぁあああああ!!」


 と、

 ミィナを抱えたデブ代官が叫びながら落ちてきた……。


 って、おい!

 何でパンイチなんだよ、テメェ!!


「ぶひッ!!」「きゃあ?!」


 ベチャリと潰れるように落ちてきた代官。

 その脂肪の上でバウンドしたミィナがポーンと、アルガスの上に着地する。


「ふぇ?」

『無事かミィナ……服がボロボロになっちまったな』


 リズから貰った大き目のシャツは、もうボロボロだった。

 だけど、体にはどこにも傷一つない。


 良かった──────……。


「ぐぶぶぶぶ……ぎ、ギザマァぁぁ!! こんなことをしていいと思ってるのかぁぁぁああ!!」


 このワシを誰だと思っている────!!


「ワシはなぁああ!! このベームスの街を治める偉大なる、」


『悪徳代官だろ?』

「……悪徳代官さん」


 ミィナとハモりつつ、首を傾げたミィナにちょっと笑ってしまったアルガス。


「んが! だ、だだだ、誰が悪徳代官だ! 誰がッ」


 いや、お前だよ。


「ふん……! まぁいい! 今すぐ謝れば寛大なワシのことじゃ、許してやらんこともない───」


『───状況わかって言ってんのか? 手ぇ、震えてるぜ?』


 どうやら虚勢を張っているだけのようだが、この状況で面と向かっているだけ中々の胆力だ。


「な、なんだと!? わ、ワシの寛大な処置を───」


 ワナワナと震える代官に向かって、アルガスがちょっと近づく。


 ギャラララ……!


「ぶひゃあああ!?」

 鋼鉄の巨体がたてる騒音に、代官は腰を抜かして見っとも無く叫び小便を漏らしつつ後退あとずさる。


「ひぃぃぃ!! よ、よせ! わ、ワシを殺したらとんでもないことになるぞ!! 王国が黙っておらんぞぉぉお」


 ……今さらかよ。

 ここまでやってんだ、もう退くわけないだろうが。


「わ、わわわ、ワシを見逃せぇぇ! な? い、今なら、ゆ、許してやるから───」

『バーカ。うちの子に手を出しておいてタダで済むと───』


「「「お代官さまッ!!」」」


 どたどたどた!!


 トドメを刺そうとしたアルガスだが、そこに大勢の声が降り注ぐ。

 見れば街の方から駆け戻ってきた衛兵の部隊らしい。


 それに気づいた代官はニヤリと顔を歪めると、

「が、がははははははッ! この不届き者めが、だ~れが貴様なんぞ許すかッ!! 貴様は拷問の末、ひっどい最期をくれてやる! そして、そのガキは当面はワシのペットとして末永く飼ってやるぞぉぉお! ぐははははははは!」


 あーらら。

 見逃すとか言ってた割に手のひら、クル~が早いのね。


 ま、どうでもええけど。

『───ミィナ。俺の中に入れ』

「う、うん!!」


 ミィナは慣れた様子でキューポラを開放すると、中にスルスルと潜り込んだ。

 彼女の気配が視察孔付近にあるのを感じる。


 たぶん、外が気になるのだろう。


 悪徳代官はこれ幸いとばかり、カサカサとゴキブリのような動きで兵らの集団潜り込んでいった。


「ぬーーー!! 貴様ら遅いぞ! やれ、ぶっ殺せ!! アルガスの首をとれぇぇえ!!」


「「「ハッ!!」」」


 100人ばかりの徒党を組んだ代官小飼いの衛兵部隊。

 全員完全武装はもとより、なかなか練度も高そうだ。


 すぐに盾で亀甲隊形をつくると、代官を内部に保護し、長槍を盾の縁でしごき始めた。


 後方には弓兵もいやがる。

「「「攻撃前進バトルマーチッ!」」」


 ざっざっざ!!


「ぐはははははははは! これが代官の権力じゃ! これだけの戦力が、ワシの手中に───」



 ───ズドォォォォオン!!!

 


 ドカーーーーーーーーーン!!



「「「あぎゃあぁぁああああああ!!」」」


 情け容赦のない、アルガスの一撃が衛兵部隊に直撃した……。

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