第18話「重戦車は怒り狂うッ」
『照射! 目ん玉むきやがれ────おらぁぁああ!』
カッ─────────!!
門を開けて群がってきた衛兵目掛けて、
夜間戦闘に使う戦車用のライトは滅茶苦茶明るい!
しかも光量を一切絞っていないので、まるで昼間になったかのような明るさだ。
「うわ! なんだ! め、目がぁぁあ」
「目が、目がぁぁあ……」
「ぐお! 照明魔法だと」
「くそ! 馬車の中に用心棒がいるぞ!」
まともにライトを直視した衛兵たちが、目を押さえて呻いている。
『よぉ、悪徳代官さまよぉ! ミィナを返してもらうぜ!』
一歩たりとも退かぬ気配のアルガスに、代官は口をあんぐりと開けたまま───。
「く、国の代理たる代官所に喧嘩を売るとは?! な、なんという愚か者だ!! ええぃ、出い! 出い!! 者ども、
代官は警備の兵だけでなく、館中の兵を強制招集。
その上、危急を告げる鐘を鳴らして街中の衛兵隊を呼び戻した。
カン、カン、カン、カン、カン、カン!!
闇に沈むベームスの街に鐘が響き渡る。
※ ※
「び、ビビってんじゃねぇ!! 突っ込め突っ込めぇぇえ!!」
探照灯を浴びて見の眩んでいる衛兵たちだったが、徐々に統制を取り戻し始めていた。
そして、館から出てきた警備兵は全員完全武装。衛兵隊謹製のハーフプレートアーマーに身を包んで、お揃いの紋章の入った盾付きの精鋭だ。
だが、後から来た連中に手柄を取られたくない門の警備兵は、目が眩んだまま遮二無二に槍を振り回す。
「おらおらおら!!」
「馬車だ! 馬を狙え! 幌の隙間から乗員を殺せぇぇえ!!」
うらー!
うらー!!
まるで子供の喧嘩のようにブンブンと槍を振り回すものだから、ギルドマスターに当たりそうで本人は気が気ではない。
「や、やめろ! 俺に当たる! やめろ!」
必死で懇願するギルドマスターだが、興奮した警備兵は一切聞き入れない。
鋭い切っ先でアルガスを貫こうと───ありもしない馬や幌を探して突きまくる。
「ありゃ? 馬がいねぇぞ?」
「何だこりゃ……鉄ぅ?!」
「くそ! 隙間だ! どっかに隙間があるはずだ!」
チクチクと刺されるのはギルドマスターばかり、カンカンと音がしても重戦車化したアルガスには一撃たりとも通りはしない!
「いで! あ、足ぃぃいい!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐギルドマスターを完全に無視して、アルガスは言い放った。
『はーい。一発は一発ね──────先に手ェ出したのはお前らだぜ』
「なろー!! 舐めやがって! 代官様の軍隊だぞこっちはぁぁあ!」
「殺せ殺せ! 金貨500枚の賞金首だぜぇ」
はッ……!!
『ヤル気で来たんだ。殺されても文句はいえねぇよな!』
ウィィィン……!
アルガスは砲塔を旋回し、砲を群がる衛兵に指向する。
「な、なんだぁ、こ、コイツ───動くぞ」
「へへ……怯えてやがるぜ、コイツぁよー」
『テメェらは万死に値する。リズにストーカーしやがったり、ウチの子を
いっぺん、死ねッごるぁぁあ!!
「ざっけんな! 俺達ゃ天下の衛兵隊! 何をしても許されるんだよ!」
「そーだそーだ!! おらおらぁあ!」
ほう。
何をしても───か?
『───じゃあ、こいつにお伺い立てて見ろぉぉお!!』
7.92mm弾によぉぉお!!
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
ズダダダダダダッダダダダダダダダダダ!
探照灯ごしにギラギラと輝く銃口!!
砲塔内に納められた機関銃、MG34が調子よく7.92mm弾を吐き出し、屑の衛兵どもを薙ぎ払っていく。
「うぎゃあああああ!!」
「うげぇぇぇえええ!!」
「ほぎゃあああああ!!」
バタバタと薙ぎ倒される衛兵たち。
アルガスは一切の容赦もなく、砲塔をグルグルと廻し、アホ衛兵どもを薙ぎ払っていく───。
「うわ! な。ま、魔法だと?!」
「まずい! 馬車に魔法使いが大量に乗ってるぞ!!」
「ひ、退け退け! 門扉を閉めろぉぉお!」
館から出撃してきた完全武装の兵どもが、慌てて門扉を閉めていく。
外にはまだ門の警備にいた連中が右往左往して逃げ惑っていたが、それすらも締め出す気だ。
「おい! 待ってくれ───助け」
バターン!!
『は。仲間を見捨てて逃走か? たいした軍隊だな? ええ、お代官様よ!』
門扉越しに窓を見上げれば、腰を抜かした代官が。
まさか反撃されるとは、思ってもみなかったのだろう。
しかも、門前の部隊は全滅。
「な、なんあななななんあ、なんということを! 国王より任命された代官に手を出すということが───」
『───悪徳代官を誅すことに何のお咎めがあるんだ?』
そうとも。
れっきとした理由がある───。
それでも王国がアルガスを捕縛するというなら、上等だ。
リズとミィナさえいれば、この国にこだわる理由もない。
なんたって、元々は根なし草の冒険者だからな!
「ぬがーーーー! 誰が悪徳代官じゃあ! ええい! 何をしておる! 殺せ殺せぇぇえ!!」
見っとも無く分けき散らす代官。
だが、兵らは既に及び腰だった。
「お、おおお、お代官さま───あれは攻城兵器ですよ!」
「鉄の荷車だ! アルガスの野郎は、本気ですよ!」
槍が全く効かないことを見て、打つ手なしとばかりに兵が言い訳三昧。
「バッカモーーーーーーーン!! 武器庫を
バッキーーーン!
隊長格の衛兵をぶん殴って喝を入れると、代官はミィナを担いで部屋の奥にひっこんでしまった。
「やだぁ! 離してぇぇえ!!」
ミィナの悲痛な声だけが屋敷に響く──。
そして、それを聞いたアルガスが黙って見過ごすはずがない。
『───おうゴラ、待てや!!』
ギャラギャラギャラ!!
猛スピードで門扉に迫ると───……。
「ちょ──────俺がいるの忘れてるだろうぉぉおおお」
ギルドマスターの悲痛な叫びなど知った事かといわんばかりに──────!!
『
「うわ! 来たぞッ!!」
「だ、だだだ、大丈夫だ! この門は鉄製──────」
バッカーーーーーーーーーン!!
『ティーガーⅠは700馬力だぁぁああ!』
ヒュンヒュンヒュン! と、ギルドマスター付きの鋼鉄製の門がすっ飛んでいき、豚のような悪徳代官の部屋にブッ刺さる!
ズッドォォォオオン!!
「ぶひぃぃぃいいい!!」
さすがに直撃はしなかったようだが、部屋がボロッボロ!!
ミィナを担いでナニしようとしてたんだか……。
ペッチャンコになったギルドマスターと、ションベンを漏らした悪徳代官。
『おうごら! 今すぐ行くからその汚ぇ面引っ提げて待ってろや!!』
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