2 二十歳のころ

 二十歳のころ

 

 真が彼女、結月真紀と出会ったのは、大学生のころだった。


 僕と結月は大学のレストランの二階で食事をしていた。季節は秋で、窓の外には色づいた広葉樹の美しい風景が広がっていた。

 赤や黄色の舞い散る葉を見て、「綺麗だね」と結月は言った。


「夢を叶えるために必要なことはなんだと思う?」

 カレーライスを食べながら、真は言う。

「うーん。計画的に人生の設計を立てることかな?」秋のきのこのパスタを食べながら、結月が言った。

「それも大切かもしれないけど、僕は信じることが必要なんだと思う」

「信じること? 信じるってなにを?」結月は言う。

「自分を。夢を。……それから、諦めないこと」

「諦めない?」

「うん。夢をかなえた偉人と言われる人たちの中には、生前にその才能を認められなかった人もいるし、すごく年をとってから、夢を叶えた人もいる。だから何歳になったとしても、夢を追いかけ続けること、夢を諦めないことが大切なんだと思う」

 真剣な顔をして真は言う。(このとき、真は冗談ではなくて、本当にそう思っていた。夢を叶えるためなら、途中で、自分の人生が終わってもいいと思っていた)

 そんな真の言葉を聞いて、はぁーと結月はため息をついた。

「あなたは本当に子供だね」

「子供っぽいのは、悪いことじゃない。天才って言われている人や、大きな仕事や事業を達成した人はみんな子供っぽい、あるいは子供だって言われていることが多いんだよ」

「まあ、確かにね」結月は言う。


「でも、あなたは違う」

「それはわかってる。ただ、そういう傾向があるっていう話をしているだけだよ」

「うん。まあ、ね」

 そう言って、結月はコーヒーを一口飲んだ。


「それよりもさ、私たちの関係はどうなるの?」結月はいった。

「関係? どういうこと?」

「『私たちはいつまで、今のままの関係を続けるのかってこと』」にっこりと笑って、(とても幸せそうな顔をして、コーヒーを飲みながら)結月は言う。

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