優しい気持ち

雨世界

1 ……あなたのことを思っています。……ずっと、ずっと。

 優しい気持ち


 プロローグ


 ……あなたのことを思っています。……ずっと、ずっと。


 本編


「こっち。こっちです」

 岡田絵里子が言った。

 荻野真は、絵里子の声を聞いて、絵里子のいるところまで歩いて行った。二人が今、いるところは湾岸地区にある美術館の前だった。

「今日、寒いですね」

 にっこりと笑って絵里子は言う。

 絵里子はマフラーをぎゅっと掴みながら、真を見る。

「うん。そうだね」

 真は言う。


 季節は十二月。

 もうじきクリスマスを迎える湾岸の東京は、今年一番の冷え込みの強い日だった。


「真さんは、美術っていうか、絵画って好きなんですか?」

「うーん。好きってわけじゃないけど、仕事の役にたつから、画集を見に行ったり、こうして美術館の展覧会に絵を見にいくことは多いかな?」

 冬の高い透明な青色の空を見ながら、真は言う。

「へー。そうなんですね」

 少し目をきらきらとさせて、絵里子は言った。


「じゃあ、早速館内に入ろうか? やっぱり、ここは寒いね」にっこりと笑って真は言う。

「はい。そうしましょう」にっこりと笑って、絵里子は言った。

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