第20話

 オーロラが話しかけてきます。

 精霊使いの能力が評価され、陪臣卒族家の娘から、一代女騎士に取り立てられた優秀な戦士です。


「精霊使いも同じなんです。

 精霊が滅ぼされない限り、主は死にません。

 精霊を滅ぼす事のできる者は限られています。

 ただ精霊は常に主と共にありますから、安全圏に置いておく事はできません」


 オーロラの言う通りなら、精霊使いも無敵に近いですが、魔獣使いと同じように、無敵だという話は聞いた事がありません。


「ですが、精霊使いも無敵だと聞いた事はありません。

 魔獣使いと同じように、主が私利私欲にとらわれたら、精霊に見捨てられるのですか?」


 リリアンも同じ疑問を持ったようです。

 コックスも興味津々で身を乗り出しています。


「その通りです。

 精霊も魔獣と同じく純粋なので、人間が欲を出すと見捨ててしまいます。

 傭兵を生業にするにしても、冒険者を生業にするにしても、節度ある行動をとらないと、全てを失う事になります。

 ですが元々そういう性格でないと、精霊と契約できません」


「魔獣使いもそうです。

 元々思いやりのある人間でないと、魔獣に好かれません」


 コックスもオーロラの言う事に同意しています。

 天性の才能と言っていましたが、才能というより性格性質なのかもしれません。

 前世の性格のままだったら、ムクに好かれなかったかもしれません。

 そういう意味でも今生は幸せな気がします。


「それと、私はこのまま騎士でいいのでしょうか?

 特殊能力があるから一代騎士にして頂けました。

 ですがそれは、もうコックス殿が成し遂げられました。

 もう私が騎士として仕える必要はなくなったのではないでしょうか?」


 これはいけません!

 順番が違っただけで、先にオーロラに教えていただいていたら、精霊使いになれたかもしれないのです。


「そんな事はありません。

 先にオーロラに教わっていたら、精霊使いになれたかもしれません。

 それに、オーロラには守護騎士として私を護ってもらわなければなりません。

 精霊使いの指導をしてもらうだけではないのです。

 それに、魔獣使いになれたから、精霊使いになれないという事はないのでしょう?」


「それは……聞いた事はありません。

 複数の精霊に好かれ、複数の精霊術を使いこなす人は聞いた事がありますが、精霊使いと魔獣使いの技の両方を会得した人の話は聞いた事がありません。

 コックスは聞いた事ありますか?」


 慌てて変な事を聞いてしまったのですが、オーロラも知らない事のようです。


「私も聞いた事がありません。

 今まで魔獣使いと精霊使いの両方の技を会得したという話は聞きません」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る