第19話

「確かに負担はございます。

 従魔が傷つき痛みを感じれば、主も傷つき痛みを感じます。

 ですが同時に、従魔が成長したり能力を得たりすれば、主も成長し能力を得ます」


 それは当然ですね。

 主が利益ばかりを従魔から得るようでは、正しい絆ではありません。

 

「ですが死ぬという事はありません。

 それに、遠隔地にいる従魔が傷ついても、主が治癒の魔法を自分にかければ、従魔も回復します。

 それと従魔が複数いれば、主は複数分の成長や能力を手に入れる事ができます」


「だがそれは、主が複数分の苦痛を受けるという事であろう!」


 珍しくリリアンが怒りを面にしています。

 過保護なくらい私を大切にしてくれるリリアンです。

 私が傷つき苦しむのを見過ごせないのです。

 恥ずかしいような、嬉しいような、複雑な心境です。


「侍女殿のおっしゃる通りですが、利と不利は等分です。

 ですが、絶対的な利があります」


「なんです、それわ」


「一頭でも従魔が生きている限り、主は死なないという事です」


 凄い事です!

 冒険者や領主にとって、これほどの利点はありません。

 何故誰もやらないのでしょうか?


「絶対的な利点のように聞こえるが、だったら何故魔獣使いの技が広まっていない」


「天性の才能が全てだからです。

 従魔に好かれる才能がなければ、どれほど努力しても魔獣使いにはなれないと言われています」


「そういう事ですか。

 最初の話だけ聞いていたら、絶対安全な所に従魔を保護していれば、戦場で無敵の戦士になれると思ったのです。

 ですが史実でもそのような話を聞いていません。

 何故ですか?」


 本当ですね。

 リリアンの言う通りです。

 絶対的な力だと思います。

 何故利用する者がいなかったのでしょうか?


「偶然襲われて、そのような状況になったのなら、従魔は主の命綱になります。

 でも欲に駆られて、主が戦場を渡り歩くようになると、従魔に嫌われて絆が切れるのです」


「なるほど!

 愛し愛され、掛け替えのない絆があってこその特殊能力なのですね。

 ならば御嬢様が心からムクを愛し、城内で可愛がっている限り、出先で偶然大けがを負うような事があっても、御命だけは助かるのですね」


「はい。

 それに何もないのに従魔が痛がりますから、御嬢様の異変にも気づけます。

 いえ、それ以前に従魔が御嬢様の異変に気がつき、周囲の者に知らせます。

 そして周囲の者を御嬢様のいらっしゃる所にまで案内します」


 何という事でしょう!

 ムクは私の守り神ではありませんか!


「御嬢様。

 私の話も宜しいですか?」

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