第15話

 父上が領地から魔獣使いと精霊使いを呼び寄せてくださいました。

 少し時間がかかったのは、私が公爵令嬢だからです。

 王太子殿下との婚約は解消されましたが、令嬢が男性と二人きりになる事は、絶対に許されない破廉恥な事なのです。


 まず大前提に女である必要がありました。

 次に本人の人柄が大切です。

 私を誘拐したり傷つけたりしたらいけないからです。

 次に家族一族友人知人におかしな者がいないか調べられました。

 だから時間がかかったのです。


 領地を預かる重臣達が、八方手を尽くして探し出してくれました。

 家臣の卒族の中に、将来自分一人でも生きていけるように、魔獣使いと精霊使いの技を学んでいる娘がいたのです。


 重臣達が面接をして、人品を確かめて二人を王都に送り出してくれました。

 父上が会って最終判断をされ、二人を女騎士に任じてくださいました。

 どのような場所であろうと、私に付き従う事ができるようにです。


「御嬢様。

 最初に御詫びしておかなければなりません。

 公爵閣下にも申し上げたのですが、私は下級の土精霊しか操れないのです。

 ですから御嬢様に御教えできるのも、基本的な精霊との付き合い方だけなのです。

 申し訳ありません」


「とんでもないわ。

 女であって、忠誠心にも家柄にも問題がない精霊使いは、貴女しかいなかったと聞いているわ。

 数多くの強い精霊を扱えても、安心して雇えないようでは意味がありません。

 オーロラはもっと自分を誇っていいと思うわ」


「あ、ありがとうございます!

 御嬢様。

 オーロラは生涯御嬢様の側を離れません!」


「何を言うのオーロラ。

 素敵な人が現れたら逃がしちゃ駄目よ」


「とんでもありません!

 私は御嬢様の側を離れたり致しません!」


 私とオーロラの話が一段落したのを見て、女魔獣使いのコックスが話しかけてきました。


「私も最初に謝罪いたします。

 魔獣を使うとは申しましても、強力な魔獣は従えていません。

 今ここにいる魔犬達だけです。

 御嬢様に御勧めできるのも、魔犬だけなのです」


「コックスも謝らなくていいわ。

 オーロラにも言ったように、父上に選ばれるだけの忠誠心と家柄なのよ。

 それを誇ってくれる方が嬉しいわ。

 それに私も犬は大好きよ。

 この屋敷にも領地の城にも番犬がいたわ」


「有難き幸せでございます、御嬢様。

 私もオーロラ同様生涯御嬢様の側を離れません!」


「ありがとう、コックス。

 それで、もうこの子を撫でてもいいかしら?

 可愛くて仕方ないの!」

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