第14話王太子ウィリアム視点
うんざりだ!
どいつもこいつも下劣極まりない!
人の不幸を喜び、自分達の利益にしようとする。
その浅ましい姿に反吐がでる。
このような腐った者共を臣下として、天下万民のための政を行わないといけないと思うと、暗澹たる思いになる。
「殿下。
よくぞ我慢なされました。
誰も殿下の本心に気がついておりません」
オーウェンが話しかけてくる。
宮廷魔導士長を務めるキャヴェンディッシュ宮中伯家の跡取り息子だ。
本人も導師級の魔法が使える俊英だ。
眼が先ほどまで群がっていた貴族達を馬鹿にしている。
この辺は阿吽の呼吸だ。
幼少より遊び相手として配されていたオーウェンだ。
俺の気持ちをよく理解してくれている。
だが、だからこそ、オーウェンが堕落する可能性を忘れてはいけない。
「しかし彼らも現金なモノですね。
マナーズ男爵家がやってきて、一人が話しかければ、先を争うように群がる。
それまでは殿下に群がっていたのに!
あんな奴らは皆爵位を剥奪してやればいいのだ!
それにマナーズ男爵もマナーズ男爵だ。
確かに入って来て直ぐにヒックス子爵に話しかけられていた。
かけられてはいたが、早々に話を切り上げて殿下に挨拶に来るべきなのだ。
それを何時までも長々と話しているから、他の者が集まって来て……」
「まあ、まてボルトン」
ボルトンも憤ってくれる。
ボルトンも幼少からの遊び相手の一人だ。
近衛騎士団長を務めるレノックス伯爵家の跡取りだ。
代々武門の家だけあって、既に騎士隊長級の戦闘力がある。
皆と一緒になって憤ってくれるのは嬉しいのだが、こいつは話し始めると長い。
誰かが遮らないと何時までも話を止めない。
余と同じ歳で一九〇センチメートルを超え、巌のような筋肉塊の姿形だけ見ていれば、寡黙な騎士に見えるのだから、初めて話した者は度肝を抜かれる。
話を止めてくれたのはアイザックだ。
アイザックも幼少からの遊び相手の一人だ。
代々王家侍医長を務めるボークラーク宮中伯家の跡取りだ。
アイザックが常に余や側近達の健康にも配慮してくれている。
アイザックがボルトンの話を中断させてくれるから、余はボルトンを嫌いにならないでいられるのかもしれない。
「マナーズ男爵家は王国一の大富豪と噂されている男です。
しかも昔は冒険者として名を馳せたとも聞いています。
陛下が、ロビンソン王国との国境紛争で財政難となった国庫を、何とかなされようとされたのは御存知ですね。
陛下が苦渋の決断で売り出された准男爵位を、仲間と共に大量に購入したのがマナーズ男爵です。
更に準男爵位を買った仲間達と国境紛争に加わり、大功を立てて男爵の位を手に入れたほどの勇者です」
何時ものアイザックにない雄弁だ。
だがその通りだ。
マナーズ男爵達の御陰で、ロビンソン王国の国境紛争は完全勝利となった。
広大な領地も切り取る事ができた。
元が平民のマナーズ准男爵でなかったら、子爵、いや伯爵に陞爵されていただろう。
こちらを見ているな。
何か話したいことがあるようだ。
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