第2話
「御嬢様!
よかった!
目が覚められたのですね。
心配いたしました。
大丈夫でございますか」
どうしたのでしょうか?
まだ死ななかったのでしょうか?
侍女のリリアンが見えます。
死にかけて夢うつつなのでしょうか?
夢なら五十年振りにリリアンと話したいわ。
「久し振りね、リリアン。
元気だった?」
「何を仰られるのですか、御嬢様。
確かに七日七晩寝込んでいらっしゃいましたが、久し振りという事はございません。
まだ熱があるのですか⁈」
本当に夢なのでしょうか?
リリアンの姿がはっきりと見えます。
リリアンの声も確かに聞こえます。
とても夢とは思えません。
もしかしたら、神様が私の願いを聞き届けてくださったのかもしれません!
「ねえ、リリアン。
熱のせいか、今が何時で、私が何をしていたかも思い出せないの。
でも父上と母上には黙っていて。
心配を掛けたくないの。
私は何歳なの?」
「何と御労しい事でしょう。
熱のせいで記憶をなくしてしまわれたのですね。
ですがこんな大事な事を、私一人の胸におさめておくわけには参りません。
旦那様と奥方様に話さないわけには参りません」
これは不味いわ。
これがやり直しの人生なら、この人生でまで、父上と母上に御心配をおかけするわけにはいかないわ。
「待って。
本当に待って、リリアン!
リリアンが少し教えてくれたら、全部思いだすかもしれないのよ。
私は七日七晩も寝込んでいたのでしょう?
父上も母上も、随分心配してくださったんじゃないの?
これ以上心配をかけていいとは、リリアンも思わないでしょう?」
「分かりました。
確かに旦那様と奥方様は、たいそう心配されていらっしゃいました。
直ぐに治るモノなら、これ以上余計な事を申し上げる必要もないと思います。
少し御話しさせていただいて、それでも御記憶が御戻りにならなければ、その時改めて旦那様と奥方様に御話しして、御医者様に診て頂きましょう」
相変わらずリリアンは心配性ね。
それもこれも、私を愛してくれているからね。
いえ、私だけではなく、父上と母上にも忠誠を誓ってくれているのね。
私はこんなにも愛されていたのね。
あの頃の私には、こんな愛情を理解する余裕もなかったのね。
「ねえ、リリアン。
私はもう王立学園に入学しているの?
それともまだ家で学んでいる状態なの?」
「何と御労しい事でしょう。
入学式の日に、高熱を出されて、大事な入学式に御参加できなかったのを、覚えていらっしゃらないのですね」
そうなのですね。
入学式から七日後なのですね。
だったらまだ十分間に合います!
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