薬物はやめろ!
青獅子
第1話
あいつが奇行に走るようになったのは、3年くらい前からだった――――――――――
「……」
「よう」
机に脚を乗せ、へらへら笑いながら挨拶をしてくる。部屋の中はまるで強盗にでも入られたかのように乱雑だった。全くもって、情けないったらありゃしない……
「へへ、俺とよりを戻しに来たのかぁ?」
「……」
「どうよ? この薬使って気持ちよくなろうぜぇ?」
「それ、覚せい剤でしょ?」
「ああん?違う、違う!」
「じゃあ、大麻?」
「そんなんたいそうなもんじゃねえよ」
「MDMAね――」
ひひっと、あいつは厭らしそうに笑ってくる。
「で、何しに来たんだ?」
「逮捕しにきたの。あんたを」
「お前が?くっくっくっ!笑る冗談は――」
「いや、嘘じゃないから。もう警察には強制性交の被害届出したし」
「んな訳あるかよ」
「……捕まえてください」
私の合図とともに、後ろから警察の方々が続々と乗り込んでくる。
「……っ!」
あいつは一瞬驚いて抵抗して見せようとしたが、あまりにも警官の多さにすぐさま観念。麻薬取締法違反の容疑で緊急逮捕された。
「先輩、やりましたね!」
職場の後輩が私に近づきそう言ってくる。
「ん……」
けど私は、複雑な思いだった。私はこいつのせいで人生をめちゃくちゃにされた。こいつに気持ちよくなる薬だと騙されたのだ。
その後私は意識を失い、気が付けばこいつに性的暴行を受けていた。薬の影響で抵抗もままならず、最後までこいつにされるがままだった。その後の私は言わずもがな。私は復讐を誓った。
そして私を騙し、レイプした挙句、薬漬けにしやがったこいつを探していた。そう、私の人生をめちゃくちゃにしたこいつを……
けど、何なのだろうこの喪失感は……ああそうか。こいつを逮捕したところで、何も変わらないからか。こいつも、もし薬に手を出さなければ――――――
「……先輩、どうかしましたか?」
「ん、何でもない。すぐに行くわ」
考えるのは辞めよう……私にはまだ、これからやらなければならないことがあるのだ。
違法薬物から、か弱き女性を守るという役割が――――――――――
薬物はやめろ! 青獅子 @bluelion
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