【別れ・・】
靴磨きを終えたヒロシは、丸の内線でひと駅移動して、大手町に移転したオフィスに戻ってきた。皆が振り向き、「お帰りなさい。」とヒロシに挨拶をした。ヒロシは窓際の自席である部長席の上にカバンをおいた。そして手に持ったままであった先ほどもらったばかりの絵はがきを眺めた。
「なかなかいい絵じゃないか。印象派的かなぁ・・。 」
自分の批評に一人でこそこそ笑みを浮かべた。
「絵のことを論じるほど知らないな。」
そして、何気なく絵ばかきを裏返した。裏面には展覧会の案内が書いてあった。それを見たヒロシの表情が一瞬で驚き顔に変わった。
「えっ!」
思わず大声が出た。周りの部下達が部長のヒロシの声に驚いてヒロシに振り向く。ヒロシは絵はがきを持っている手がブルブルと震えている。
「お兄さん・・、亡くなったのか・・。」
そのはがきの裏面の展覧会の案内にはタイトルがかかれていた。
『赤沢幸一遺作展』
ヒロシは、机の上のダレスバッグをみた。自然と涙が出て来た。そしてオフィスで周りをはばからず嗚咽した。
その後、ヒロシは幸一・賢二のことを調べてみたインターネットで検索して二人の素性は直ぐにわかった。二人は絵画の世界ではそこそこの画家であった。やはりただの靴磨き屋ではなかった。靴磨き屋だけではなくて、芸術的才能で人生の基盤を築き、それを通して様々な著名人と繋がっていることを察せられた。
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