【5年前 東京駅丸ノ内JR北口駅舎前】
夏の暑い日だった。夏は直射日光が強いこともあり、職人達はカードレール横ではなく、少し陰になる地下鉄への階段通路となる建物の壁に移動して露天営業をしている。その日は兄の幸一が一人で営業していた。
ヒロシは靴を磨いてもらいながら幸一との暫しの会話を楽しんでいた。
「お客さんはどこで働いているんだい。」
「僕はね、ほらあのビル、ここ丸ノ内だよ。」
「そうかいそうかい。ここで営業しているとね、丸ノ内のサラリーマンが多いだろ。政治家の卵みたいなのも来るよ。そいつらがね、結構偉くなったりしてね。」
「へぇー。」
「銀行や保険会社のの役員とか、商社の重役とか、いつのまにか衆議院議員になった奴とかね。今でもこっそり来てくれる。」
「そりゃ凄いや。」
「オヤジは俺たちよりも長くやっているから、そういう偉い人達の上客を良く知っているね。まぁオヤジほどじゃないけど、俺たちもそれなりにね。」
「お金持ちの知り合いが多いので不思議に思ってた。」
「そいつらがね、パーティなんかやったりすると俺達にも声掛けてくれる。そこでまた色んな人を知ったりね。この前は元巨人の監督のパーティに呼ばれたよ。野球選手と結構知り合いになった。」
「おじさん、偉い人の知り合い多いねぇ。」
「ここに来ると皆偉くなるんだよ、ははは。お客さんはどうかなぁ、なるといいねぇ。」
ヒロシは苦笑した。
何故、著名人の知り合いが多いか教えてくれたが・・。ヒロシとしては靴磨きの営業だけではない何かを彼らに感じていた。
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