innocence - LAMP IN TERREN


 Askew杯「声が良いアーティスト選手権」の中でなかなか上位に食い込んでくるのがこのLAMPランプ INイン TERRENテレンです。2015年にメジャーデビューした歴の浅いバンドですが、その音楽性は苦悩と衝動と静かさに満ちていて、多くの人がぐっとくるんじゃないかと感じています。ほぼ同い年ということもあり、これからもっと有名になって欲しいバンドの一つです。


 どちらかというと静かにシャウトする系のエモさ抜群の曲が多いのですが、僕が彼らに出会ったのはこの衝動性を前面に出した「innocence」でした。メジャーデビュー後の1stシングル曲で亜人という映画の主題歌にもなっているそうです。


 ただ僕はそんな情報は全くなしで、ふとYoutubeに出て来たMADを見て「この曲良いな……」となったのが始まりです。もれなく歌詞が響くんですよね。


 ―――――

 気付けば戻れない日々は始まって

 選べなかった椅子が居場所になっていた

 終わり方はどうだ 頷けるだろうか

 答えのない問いを繰り返し続ける

 

 僕が僕じゃない誰かを生きる権利も

 終わりを振り払う資格もなかった

 ―――――

 

 この感覚が最高ですね。僕は本家とりとめのないエッセイでも「今この瞬間に死んでもいい」を標語にして生きていきたいと書いたことがありますが、それはつまり、それまでは満足できるような人生じゃないことを痛感しているからなんですよね。だから、意識改革が必要だったわけです。


 その改革前の感覚がまさに上記の歌詞と同様なんですよ。いつの間にか僕の人生は進んでいて、不満を抱えながらも現状に甘んじている。誰かをうらやむことばかり覚えて、だけどその誰かになる権利もこのままのうのうと生きている資格もない。


 自分が嫌いで、嫌いで、嫌い続けたことのある方は分かるんじゃないかな、と思います。今でこそ好きな部分もありますし、誰かに僕の人生をくれてやるような真似はしませんが、その前の痛々しい青い気持ちを呼び起こさせてくれるのですね。


 ―――――

 どれだけの物を抱え込んでいたって

 果てに辿り着く頃に取り上げられる

 何の為の人生 意味など無いにしても

 投げ出すにもちょっと腰が引けるよ


 何を選んでも弾かれる日々の先で

 この目に映っている色はどうだった

 疑いようもない程 頭では解っている

 絶え間ない定めの中から捉えた色

 ―――――

 

 意味のない人生を生きているよなぁ、と感じながらもそれを放り出せるような勇気もない。全部が全部、間違いだったような選択の記憶は僕の中に息づいています。だからこそ「彼女とキノコと、ちんちん電車」という恋愛ギャグ現代ファンタジーに属する長編を書けたのですが(唐突な自作紹介)。


 基本的に男子大学生がわちゃわちゃするだけの恋愛ものと思って貰っていいのですが、その底にあるのはアジカン「桜草」ですし(この曲の紹介はいつかします)、Terrenのinocenceと同様腐った心とそこからの解放、というよりも吹っ切れかな。ずくずくになってしまったものをプールに放り投げるような潔さを意識しました。


 この曲に関しても、ずっと暗いまま沈んでいくようなものではありません。最後の最後で吹っ切れます。乱暴な言い方ですが、吹っ切れるって言葉が僕は好きなのでこう表現します。現状としては何も変わっていないのですけどね。それが良いんです。全部が良くなってハッピーエンドなんて普通は起きませんから。結局は本人の問題なんですよ。どう自分を誤魔化して、ある意味上手くだましていくか。そして、そこに勝手に意味を見出すか。


 それが、誰かを生きる権利もない僕たちがこの先も生きていくために大切にすべきことじゃないのかなぁ。


 この曲を聴いて、そんな考えが残りました。






 innocence / LAMP IN TERREN 公式PV

 https://youtu.be/VtzmaMqONXQ



 参考) Re:ゼロから始める異世界生活 MAD

 https://youtu.be/3cyVjEitKK8

 

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