終章(後編) 最も幸せな願い

白い光から白いベールを身にまとった一人の女性が現れた。その背中には透明で見えないが確かに存在を感じる翼があった。

「無に等しき理想…間違った思想。全部消し去る。」

彼女は大きく透明な剣を構える。

『虚化-ホロウ- 虚像を照らす剣(ノンライト・セイブ)』

その光からはどこか不安を消し去る様な清々しさを感じる。その光が魔王を包み込んだ。


白い世界でエクステラは目覚めた。

(何かが私の背中を押してくれた。友達?違う。何かもっと大切な人…そう、お兄ちゃんに何か伝えたいことが…)

しかし、それは次第に意識とともに薄まっていく。

(待って、なんだっけ。あれ?でも、お兄ちゃんとは少し違う。あれは誰だっけ?)

そのまま気を失った。


(…テラさん!)

気がつくと魔王の間で倒れていた。

「あれ?私は…」

徐々に意識が確かになっていく。

「魔王ちゃんは!」

飛び起きて確認すると魔王は倒れていた。

「あれ?」

不思議なことが多くて混乱した。


「あーあ、結局道具のままだったのか。」

魔王は起き上がった。

「皆さん、大丈夫ですか?!」

そこへ2人の魔女が来た。

そして、彼女らから魔王の経緯を聴いた。


魔法使いや魔女が栄えていた街では魔力を変換し生活に役立てていた。魔力には個人差がある。それでは生活格差が生まれてしまうとし、ある時生まれた危険すぎる魔力を持った子供をエネルギーとして監禁することにしていた。それがこの魔王だった。セーラが街を壊したことにより果てしない年月から解放された彼女は自分を道具として扱われていたからと言ってその膨大な魔力を使って全てを遊びの道具にした。


「はい、これ。」

魔王は王冠をエクステラに渡した。

「この中にはこの世界を治めていた妖精が封印されてる。このくらいの封印解けるでしょ。」

エクステラは自身の虚無の力を用いて封印を解いた。そこでエクステラは光に包まれた。

いつもの白い空間には1人の見知らぬ女性がいた。

「ありがとう。この世界を救ってくれて。」

私は尋ねた。

「どうして?この世界にいるの?」

「あなたの魔力に干渉しています。私ですら干渉が厳しいこの魔力はこの世界のものでは無いですね。ですが、お礼をさせていただきます。願いを1つ叶えてあげます。」

私は悩んだ。

「じゃあ、質問してもいい?」

「はい、いいですよ。」

「幸せって何ですか?」

「それはあなたが決めることです。人によって幸せは違います。一般的には貴女が後悔しない選択を幸せと呼びます。」

私は考えた。

(私の幸せはない。皆の笑顔が幸せなのか?それを願っても私の本質の幸せは叶わない。それを後悔できないとは言えない。)

そして、覚悟を決めて言った。

「私は…いや、私達は幸せになれる運命が欲しい。昔の自分に決められた運命も誰かに操られた運命も跳ね除ける、そんなハッピーエンド。」

「…いいでしょう。特別ですよ、私は貴女を帰すことしか手伝えませんがきっとその運命も叶うでしょう。貴女が努力した分だけ幸せに近づくことが出来るでしょう。」

「ありがとう。」

「いえ、あちらではお世話になっていたので。帰りたい時は泉へ来てください。」

そういうと彼女は消えていった。

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