11章 呪われた過去

とある屋敷にて魔導士は過去を見ていた。

「…様、何か御用ですか?」

「ねぇ、勇者がそろそろやってくる。あなたは何を信じるの?」

「わ、私はもちろん…」

「あなたの自由にしなさい。私を信じるのか、魔王を信じるのか、勇者を信じるのか…。」



エクステラ達は呪われた町にやって来た。とても闇が濃く、普通の人では太刀打ちできない。エクステラの能力で全員が動けている。

「さてさて、ここを抜ければ魔王の城。イル君、やっと終わりが見えてきたね。」

「う、うん。そうだね。」

イルマの様子があの時からおかしい。それは全員が理解していた。エクステラは別世界から来た。なら、帰らなければならない。おそらく、魔王を倒せば彼女は帰ってしまうのだろう。そう考えるとみんなが暗くなってしまう。

「み、みんな。そんなに暗くならずに、ね。もっと笑顔で明るく行こうよ。」

そう言っているエクステラも辛いことは分かっていた。

「だ、誰ですか?もしかして、勇者?……よ、よし!ゆ、勇者よ、わわわ、私が倒してやる!」

その声に全員が警戒していると、女性が怯えながら出てきた。女性はエクステラ達を見ると驚いた。

「あ、あなたはエクステラ様!あの時はありがとうございました!」

「あ、ローラちゃん!久しぶり!」

「エクステラさんの知り合いですか?いかにも敵なのですが…。」

「うん、森でイル君とはぐれた時に助けたんだ。」

「あ、あの~、エクステラ様。勇者が侵入しているという情報が逢って向かっているのですが、どこかで会いませんでしたか?」

「勇者は私だけど…。」

その時、ローラの中で矛盾が生じた。

(も、もしかしてエクステラ様が勇者だなんて。でも、そうでもなければここに来る必要なんてないわけだし…。あの方の為に私は勇者を倒さないといけない。でも、エクステラ様は命の恩人で恩返しをしたい。あー!どうしたら…。そうだ、あの方は誰を信じるか、自分のしたいようにと言っていた。なら、私は…。)

「ローラちゃん!」

「は、はひぃ!」

「いつまでも悩んでいたらダメだよ。こういう時は誰かの言う通りに従うんじゃなくて、自分がしたいことだけをするといいよ。私と戦うのなら私だって戦う。ローラちゃんの決めたことなんだから私もその決断を信じるよ。」

「ふぅ~。いえ、大丈夫です。私は決めました。エクステラ様を助けます。エクステラ様に助けられていなかったら、私はここにいられなかった…。」

「あ、そういえば、ローラちゃんは魔導士さんのこと知ってる?」

エクステラは魔導士に言われたことを思い出して聞いた。

「魔導士…、今その称号を持つのはセーラ様だけ。」

「へー、魔導士さんはセーラちゃんって言うんだ。」

「ちゃん付けはだめですよ。あの方は魔法使いの中でもトップクラスで優秀な魔導士の称号を持つ立派なお方なのですから。」

エクステラ達は魔導士とのことをローラに話した。

「セーラ様はそんなことを…。確かに私はあの方の過去を知っていますが…。もしかしたら、エクステラ様のことを信じようとしているのですね。分かりました、私があの方…セーラ様がどうしてこうなってしまわれたのか、お話ししましょう。」



昔、この辺りには魔女の村がありました。近くにある魔導の森を管理しながら様々な魔法を開発しては役立てていました。そこに一人の女の子が産まれた。それは伝説にもなるレベルの魔力を生まれつき持っていました。私はその女の子の専属教師として配属されて、その魔力を身近で感じていましたが、ある時に彼女は禁断の魔法を使ってしまった。普通の魔法使いなら魔力不足で自殺行為になってしまう代物で、禁断とはいえ管理が甘かった。でも彼女が私の不意を突いて、禁断魔法を使ってしまった。成功するはずのない禁断魔法は彼女の途方もない魔力で成功してしまいました。そして、この地域は腐ってしまった。私は森へ出かけていたもので、私が帰った時、この地はすでにこうなってしまっていて、そこにはあの子しかいなかった。そして、その魔法は解き放ってはいけないものも解き放ってしまった。探索していると女の子を見つけた。私はその正体を調べた。その間、セーラ様はその女の子と遊んでいた。そして、分かったのは…その女の子は遥か昔にセーラ様以上の無限ともいえる魔力を持ち、永遠に村のエネルギーとして封印されていたまさに呪われたような子だった。それを知った頃にはもう遅かった。セーラ様が魔法を訓えてしまった。彼女は徐々に高度な魔法まで使えるようになっていった。その時、私は何とかその子を封印する方法を探していた。その時に失敗して困っていたのがエクステラ様と出会ったときの私です。



「自分の力ですべてを滅ぼしたのがセーラの…」

イルマは自分に好意を抱いていたセーラの過去を知り、思い詰めていた。

「セーラ様はそれ以降、自分のような酷い過去がある者を導いているのです。魔王となったあの子もそうだったように…。」

「だから、私の過去にも…。」

セーラがどのような想いを抱いていたのかを知った。私の過去には未来もすべてが無駄だったように消える運命しかない。自分の存在理由が分かっている私には決められた未来か虚無のどちらかだ。でも、彼女の失敗はまだ…。

「お二人とも!何を考えているかは知りませんが今の状況を考えてください!」

エクステラとイルマが考え込んでいる状況を見たラウラが怒鳴った。

「「ご、ごめん…」」

二人が声をそろえて言った。そして二人は笑った。レイは二人が笑っているのを見てほほ笑んだ。



「さて、どうしようかなぁっと。」

エクステラは考えた。確かにセーラはどちらとも言えない立場にいる。味方につけるか、それとも敵として戦って倒すのか…、どちらも選べない。今彼女はどんな考えだろう。私はなるべく戦いたくはないけど彼女がそれで不幸になっては困る。

選択…、私はそれを回避させられてきた。決められた運命のままに在った。でも、私は私になった。これからは選択を委ねられる。

“なんだ…私もずいぶん我儘だ…。”

“やっと気づいた?みんなの幸せなんて考えてもきりがない。全部を選ぶことなんてできない。それは全部私の我儘で叶えられない理想。ほら、みんなあたしみたいに自分のことだけ考えるだけで精一杯。諦めないと。”

“フフ、なら…そっちはどうなの?私はもうあがけない…。”

“えっ、まさか…。”

“…答えを見せて…”

彼女の心はもう…。

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