3章 勇気の証明

ブライト山に来た二人は山を登って行った。今にも崩れそうな崖をエクステラは上機嫌で進んでいく。

「テラさん!危ないのでもうちょっとゆっくり進みましょう!」

「大丈夫だよ、ほら。」

その場で何回も飛び跳ねたエクステラに突然上から大きな岩が落ちた。

「大丈夫ですか!」

「へへっ、大丈夫だよ、このくらい。」

「あんな岩が当たったのに…。」

「私こう見えてかなり丈夫なの。でも、体力と同じで結構やばいかも…。」

そのままエクステラは倒れてしまった。


「う~ん…あれっ。ここは?」

エクステラが目覚めると建物の中にいた。

「テラさん!」

「イル君。ここはどこなの?」

「テラさんが突然倒れて慌てていたらそこにご老人が現れて助けてくれたんですよ。」

「そう、なんだ…。私ね、別の世界から来たって言ったでしょ。でも、こっちの世界に来てから体が思うように動かなくて…。」

「全てこの少年から聞いたが、君が勇者だそうじゃな。わしはすべての職業を極めたただの爺じゃ。」

「初めまして、おじいさん。私はエクステラって言います。」

「ふぉっふぉっふぉ。なかなか良い女子じゃのう。」

「爺さん、あまり変なこと考えんなよ。」

「そうじゃのう。おぬしたちがここへ来た理由は分かっておる。職業を得たいのじゃろ?そうじゃ、勇者よ。わしに色々と家事をしてもらいたいんじゃ。」

「おじいさん、ごめんなさい!私は家事ができないの。」

「大丈夫じゃ、わしが教えるぞ。そして、少年はどうしたいのじゃ?」

「僕は…。(テラさんの前でかっこいい姿見せたいし)大剣が使いたいです!」

「ほう、そんなひ弱そうな体をしてか?いいじゃろう、ただし修業は甘くはないぞ。本当に良いのじゃな?」

「は、はい!」

イル君が強がっているのは私にもわかった。だけど、私のために努力しようとしてくれる気持ちは何よりもうれしかった。


あれから数か月経った。私は私にはできないはずの料理をはじめとした様々な家事が出来るようになって、元の身体能力を取り戻していた。あまり私は頭がよくないけど、それでもわかる。私はここに来てから何かがおかしい。

そう考えているとおじいさんがやって来た。

「今日は少年の力を試す時じゃ。」

イル君がやって来た。

「爺さん、なにをすればいい?」

「実はわしはこの山から出られないように魔王軍の魔物に結界を張られているのじゃが、その結界の核を護っている魔物を倒してほしい。それがわしからの試練じゃ。」

そして私たちは洞窟へやって来た。そこには巨大なドラゴンがいた。

「誰だ…。わが眠りを妨げるのは」

イル君は震えながら言った。

「お、お前を倒しに来た。」

「こんな小僧が…。笑わせてくれるな。」


イルマはドラゴンの火の息に逃げ回っていた。

「しょうがないなぁ、イル君は。」

エクステラはドラゴンの目の前に出て言った。

「ふふっ、ドラゴンさん。私が勇者だよ。倒さなくていいのかなぁ。」

ドラゴンは狙いをイルマからエクステラに変えた。

エクステラは火の息や火の球を華麗にかわしていく。

イルマは悩んだ。そして何かを思いつくと洞窟の入口へと向かった。

そして少し経った後、戻ってきたイルマはエクステラに言った。

「テラさん、洞窟の入口に向かってください!」

「オッケー」

入口が見えてきた後、入口近くに目印が見えた。それに気がついたエクステラは目印の場所を踏むと見せかけて後方高くに跳んだ。そして、ドラゴンはそのままの勢いで目印の位置を踏んだ。その後、ドラゴンの足元が崩れ、そのまま山から落ちていった。

そこへイルマとおじいさんが駆けつけた。

「イル君、これすごいね。どうやったの?」

「いやぁ、これは洞窟に入った時に少し入り口付近の足場がもろくなっていたのを感じてね、そこの数少ない硬い部分を柔らかくしただけだよ。あの重さだと確実に崩れると思ったからね。村でのいたずらの経験だね。」

おじいさんは興味深そうにそれを聞いた後、イルマに言った。

「ふぉっふぉっふぉ。ここまでの頭の回転に手際の良さ、おぬしは罠師に向いておる。もしかするならば、このわしなんかより才能があるかもしれぬのぅ。」

そしてそれからイルマは罠師としての修業を積むことになった。

1か月くらい経ち、2人は旅発つこととなった。

「おじいさん、いろいろ教えてくれてありがとう。」

「礼にはおよばぬぞぃ。ところでお前さんたちは次にどこへ向かうんじゃ?」

二人は悩んだので、おじいさんは笑って言った。

「なら魔導の神秘という地域を目指すとよいじゃろう。そこには砂漠と氷の地、魔導の森があり、その先にあるグランド・スパイラルという地にわしの息子がおる。そやつに会い、稽古をつけてもらえ。」

二人は喜んで礼をした。

「ありがとう、おじいさん。じゃあ、行ってくるね。」

二人は出発した。それを見送るおじいさんの顔は心配そうだった。


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