封印編 第3章 第5話 鏡の試練・エクステラ編(HOLLOW QUEST外伝)
エクステラが目を覚ますとなぜか懐かしいような気配がした。振り向くとそこには私がいた。
「アハ♪久しぶりだね。」
私は確かに彼女を知っているはずなのに思い出せない。彼女は不思議そうな顔をして言った。
「アハハ、そうだったね。あの時の副作用で覚えていないんだっけ。…じゃあ、あたしの持ってる“私”の記憶、渡してあげる。だって、あたしは“私”だからね。」
彼女が私に触れると頭に懐かしい記憶が流れてきた。私はいつの間にか泣いていた。そう、かつて私はある異世界を旅したことがあった。その時に私という存在はミリの存在としての定義から外れてしまった。彼女はもう一人の私である『悦び』のクロステラだ。私が他人の幸せに固執する『慶び』で、彼女は自身の幸せに固執する『悦び』だ。私は異世界での冒険の中で彼女と和解して、目的のため協力したこともあった。そして、一緒に冒険してきた彼のことも思い出した。その人はもしかしたらお兄ちゃんよりも大切な人だ。
「…私、こんな大切なこと忘れていたんだ…。ありがとう、クロステラちゃん。」
クロステラは私に目配せして言った。
「ふふっ、当然でしょ。だって…」
二人はあの誓いをお互い声をそろえて言った。
「「2人で本当の『喜び』だから…」」
クロステラはいつもみたいに笑って話した。
「アハハ♪本当に懐かしいね。そうだ、これからは前みたいに協力してあげるよ。だって、あたしがいなきゃ、『喜び』じゃないもんね。」
私と彼女は一時的に分離することができる。あの頃の戦闘でよく協力して戦った。
「ごめんね。クロステラちゃんがいないのに『喜び』を名乗ってて。」
クロステラちゃんは見たことない優しい笑顔で答えた。
「…大丈夫、その分これからは2人で一緒に頑張ろうね♪」
その時のクロステラちゃんはまるであの時の私だった。私はあの頃を思いながらつぶやいた。
「…ねぇ、また逢えるかな?」
クロステラちゃんは私を抱いて言った。
「…アハ…、多分、きっと…ね。」
2人はお互いを抱き合いながらあの頃を思い出して泣いた。
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