第2話

カメは家に帰ってから頭を抱えました。

駆けっこでどうやったってウサギに敵う筈がない。

何故あのような勝負にしてしまったのだろう。

カメは明日の事を考えると憂鬱になってしまい眠れず、落ち着くために近くの池に行きました。

すると、池のほとりには、「先生」がいらっしゃいました。

カメは「先生」に今日あった事と、明日の勝負の事を話しました。

そして、正直に自分の気持ちを話しました。

「先生」、私は明日の勝負に出たくありません。

どうか「先生」のお口添えで勝負を無かった事にして頂けないでしょうか。

「先生」は静かに池を見つめていましたが、静かに言いました。

カメよ。お前は駆けっこでウサギに勝つことはできないだろう。

しかし、カメよ、お前は自分で挑んだ以上、勝負をすべきです。

一歩一歩、しっかりと道を踏みしめ、山の麓を目指しなさい。

周りの動物達から何を言われようとも、ただ勝負には真面目に向き合いなさい。

お前が勝負に勝とうと負けようと、お前がウサギより鈍いという事実は何一つ変わりません。

カメは「先生」を不思議そうに見ました。

結果が変わらないならば、やる意味が無いのではないでしょうか。

「先生」は首を振って言いました。

お前は勝負を経て、自らの力の限界を知るのです。

それは目先の結果よりも、はるかに大切なものとなるはずです。

「先生」はそう言って、そのまま池を後にしました。

カメは「先生」の言葉を考えながら、しばらく池の傍で天の星を見上げていました。

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