第12話 芝居
わかった。
妻は芝居をしているんだ。
あの赤ん坊は、何か事情があって誰か友達から預かったんだろう。
きっと、明日にはその母親が迎えにくるんだ。そりゃそうだ。
子供を拾ってくるはずがない。
ミルクだって、オムツだってあったじゃないか。
なんだってあいつは、こんな芝居をしてるんだろう。おかしなやつだ。
安心したら、腹が減った。
カップラーメンを食べてもう寝ちゃおう。
着換えて、お湯を沸かし、カップラーメンにお湯を入れる。
不思議なもので、家に赤ん坊がいるだけで、家の中に甘ったるいような匂いがする。
カップラーメンの蓋をめくると、一気に赤ん坊臭が消えた。悪夢も明日の朝になればこんな風に日常に戻れるはずだ。
ラーメンをもぐもぐと食べていると、廊下の向こうから、物置部屋にいたはずの猫がとことこと歩いてきた。あ、部屋のドアをきちんと閉めてなかったか…。
オレの足元まで来て「ナォー」と丸い目でオレの顔を見上げる。
「お腹すいたのか? カリカリあったでしょ」「ナィオー」「ぇ?、今、ないよーって言ったな」「んー」「あはは。ちゃんとしゃべれるんだな。えらいぞ。ふふふ」
かわいい猫。
オレは、冷蔵庫から出した三角の6Pチーズの先をちぎって猫にあげた。
ソファーに座り、テレビを見なから缶チューハイとチーズ。横にねこが来てオレに背中をつけて丸まった。猫はふわふわと温かく心地がよく、オレはいつの間にか眠ってしまった。
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