第22話 邪神の本
「私の正体を知られたからには生かしてはおけない。必ずここで死んでもらうよ! ハートレス・ソード!」
ハートレスのイエルは心無で作り上げたと思われる剣を作りだし襲い掛かってくる。
「戦わなければやられる!? サイキック・ソード!」
僕はイエルに対抗するために超能力で剣を出して応戦する。
「やるな。脆弱な人間よ。」
「おまえこそ。」
「だが、どこまで耐えられるかな! オラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「クッ!?」
イエルは猛攻を仕掛けてくる。僕は防戦一方になる。
「やめて! どうして私たちが戦わないといけないんだ!? きっと話し合えば私とアースみたいに分かり合えるよ!」
生まれたばかりのアエルは純粋に物事を考えていた。
「騙されるものか! そういって油断させといて私を倒すつもりだな!?」
「倒す? 誰も倒さないよ! 私たちはアースの妹の体を探しているだけなんだ!」
「体?」
ピタッとイエルの動きが止まる。
「おまえたちは私を倒したり、吸収しに来たんじゃないのか?」
「違う。僕の妹の体を取り戻しに来ただけだ。誰もおまえになんか興味はない。」
僕ははっきりと交戦の意思はないことを明示する。
「なんだ。それならそうと言ってくれ。ここにいると私に声をかけてくる奴は、心無か人無ばかりだからな。アハッ!」
「当たり前だ!」
渋谷のハチ公前に普通の人間はいない。
「もしかして、あれがおまえの妹さんの足じゃないか?」
イエルはハチ公象を指さす。
「んん? ・・・・・・アアアアアー!?」
よく見るとハチ公象に妹のアリアの左足が乗っていた。
「アリアの左足だ! やったー! お兄ちゃんはやったぞ!」
僕はアリアの左足を取り戻した。
「良かったね。アース。うるうる。」
もらい泣きするアエル。
「おいおい、おまえもハートレスだろうが。」
「ハートレスでも泣きたい時はあるんだよ。それにアースは私のお友達だから。アースが喜ぶと自分のことの様に嬉しいんだ。アハッ!」
アエルは友達思いのとても良いハートレスだった。
「それにしても何で妹さんの足がハチ公象にあるんだ? 変わった趣味だな。」
「違うわい! そこじゃないだろう!?」
僕はイエルに事情を説明する。
「そうか。そういう遊びがトレンドなのか。」
「違うわい!」
「冗談だ。冗談。」
「イエル、言っていい冗談と言ってはいけない冗談がありますよ!」
「悪かった。ごめんなさい。」
優しいアエルを怒らせるとかなり怖いかもしれない。
「それは邪神の呪いだ!」
「邪神の呪い!?」
イエルが呪われてバラバラに妹がされたのは邪神の呪いだという。
「どうして、そんなことがおまえに分かる!?」
「それは・・・・・・この本に書いてある!」
「なんですと!?」
渋谷のハチ公前でイエルが読書していた本のタイトルが「邪神の正しい目覚め方。上巻。アハッ!」である。
「なぜ語尾に「アハッ!」を付けたんだ!?」
「上巻ということは下巻もあるというのか!?」
「そこは触れるなよ。」
いよいよ本題に入る。
「邪神の目覚まし方は、魔女の血を引く少女が必要。少女の体は邪神の呪いによりバラバラにされる。バラバラにされた少女の体を集めることで邪神が復活します。阻止する方法は・・・・・・下巻につづく。」
これが本の内容だった。
「おい!? 「アハッ!」は付けないのか!?」
「そこじゃないよ!? 下巻につづくだよ!?」
「そこでもないと思うのは私だけか?」
一番イエルがまともだった。
「そうか。私が心無から自己の意思に目覚めたのは妹さんのおかげだったのか。」
「そうなんだ。僕は妹のアリアの体を集めて、必ず生き返らせて見せる!」
僕は必ず世界を取り戻して見せる。
「ねえねえ、イエル。」
「なに?」
「もう私たちはお友達だよね?」
「違う。」
「えええええー!? これだけ仲良くなったのに!? どうして!?」
「私は見ていたいんだ。人間が何を考え、どう動くのか。それに行き場のない悲しい心無を吸収して救済してあげないとね。」
「え!? 心無を吸収!? そんなことができるの!?」
「できるよ。ここは絶好の狩場なんだ。なんせ1回の横断歩道を渡る人間の数が3000人を超えるパワースポットの側にある伝説の犬の像があるんからね。」
初めてイエルはニッコリと微笑んだ。
「だから私の読書の邪魔をするな!」
「ええー!?」
追い返されるアエル。
「何かあったら助けてやる。」
「え?」
「私たちはお友達だからな。」
少し照れ臭そうなイエル。
「やったー! ありがとう! イエル!」
僕たちはイエルと友達になった。
つづく。
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