第20話 これが愛
「アリア。」
僕は占いの館にやって来た。
「アリア。」
アエルから貰った妹の右手を生き返りの人形に備えるために。
「僕のアリア。」
僕は抵抗できないアリアの手を両手で握っている。
「直ぐに生き返らせてあげるからね。」
その表情は猟奇的だった。
「・・・・・・あの、気持ち悪いんですけど。」
占いの館の怪しい女占い師が僕の妹に対する溺愛を気持ち悪そうに見ている。
「大丈夫。妹さんらしいから。」
心無が実態化したハートレスのアエルも一緒に来ている。
「なんだ。そうなの・・・・・・・って、もっと危ないじゃない!?」
「大丈夫! 僕とアリアは血のつながりはないから。」
「そうなんだ。良かった。」
妙に納得するアエル。
「今までは妹だからと僕は自分の感情を抑えてきたけど、今回の様に何かが起こって手遅れになってしまっては意味がない。」
僕は後悔していた。
「妹を生き返らせることが出来たら、僕は妹に、アリアに告白する。僕はアリアに好きだと伝える。」
大切なもを失ってから気づいた。
「おお!」
「きゃー! きゃー!」
告白という言葉に占い師と心無は興奮する。
「私にも愛する人ができるのだろうか? 私は誰かを愛することができるのだろうか?」
アエルは自身にも愛し愛される相手ができるのか不安だった。
「もう恋なんてしてないな・・・・・・。私の赤い糸の運命の相手はどこにいるのよ!?」
売れ残りの占い師だった。
「好きだよ。アリア。」
僕はアリアに誓った。
「ドクン! ドクン!」
取り戻したアリアの心臓の鼓動が照れているみたいに速くなる。
「妹さんは言葉が喋れないから心臓の鼓動で返事をしているみたいだね。」
「そうかな? アリアが喜んでくれているといいんだけど。」
アリアが僕の愛を受け入れてくれるのかは分からない。
「アリア、直ぐに体を集めて生き返らしてあげるからね。」
アリアの返事を聞くのは、アリアが生き返ってからだ。
「ドクン! ドクン!」
心臓だけでも、僕はアリアを感じていた。
「それにしても心配だわ。」
占い師が語りだす。
「地縛霊のような心無に自分の意思を持つハートレスに進化させるアリアちゃんの引き裂かれた体。」
「何が言いたい?」
「このアエルは、きっと稀な純粋なハートレスだと思うわ。自分の意思をもって行動するということは、人間の様に悪いことを考えるハートレスもいるはずよ。」
「確かに。アエルは妹を探している僕が初めての人間だったから良かったのかもしれない。」
例えるとカルガモの親子を初めて見たアヒルは自分のことをカルガモと同じだと思う。
「もしハートレスが悪い人間に出会い、悪いことをすることが普通だと思ったら?」
占い師の推測に衝撃が走る。
「アリアの体を傷つけたり、売り飛ばしたりするハートレスも現れるかもしれない!?」
アリアの体が危ない。
「アース、急いでアリアちゃんの体を見つけるのよ!」
「アリア! 直ぐに僕が体を取り戻して生き返らせてやるからな!」
気が気でないアースは外に駆けていく。
「待ってよ!? アース!? 私も行くよ!?」
アエルもアースの後を追っていく。
「ニヤッ。」
少し占い師の口元が緩む。
「!?」
その様子を敏感なアエルは感じた。
「ねえねえ、アース。」
外に出たアエルは僕に尋ねてきた。
「なんだ?」
「あの占い師は信じていいのかな?」
アエルは自分が占い師に怪しい気配を感じたことを僕に伝える。
「大丈夫だよ。怪しいけれど僕のアリアを生き返らせる方法を教えてくれたり、協力的で良い人だよ。」
「ふ~ん。アースが気にしないならいいよ。」
僕は占い師を信頼していた。
「クックック。」
占いの館では占い師が一人で笑っていた。
「私が占い師? クックック、私は魔法少女さ。」
占い師の正体は、魔法少女だった。
「人間。なんてバカな生き物なんだろうね。人に騙されて傷ついて、どんどんどんどん優しさや温かさ、人の心を失くして大人になっていく。心無が生み出されるのも分かる気がするわ。」
占い師は人間のことを忌み嫌っているみたいだった。
「まさか現世に魔女の血を引く女が見つかるなんてね。なんて私はラッキーなんだ。」
占い師は何でも知っている。
「バカな人間は妹が生き返ると思っているみたいだが、何者かの呪いでバラバラに引き裂かれた者が、体を集めたぐらいで生き返ることはない。」
占い師はアースたちを騙していた。
「体を全て集めた時に生き返るのは・・・・・・邪神様だ!」
生き返りの人形ではなく、邪神の人形であった。
「クックック!」
邪神の復活を目論む占い師であった。
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