第16話 妹の心臓
「でも、妹の体の部分がどこにあるのかなんて僕には分からない? どうやって探せばいいんだ?」
僕は妹を生き返らせるために、バラバラにされた妹の体を探すことにした。
「感じろ。妹を感じるんだ。超能力者のおまえならテレパシーで妹の気配を感じ取れるはずだ。」
「テレパシー?」
占い師の言葉を信じて、渋谷の街中を歩いてみた。
「ドクン! ドクン!」
何かの音を感じ取り耳に聞こえてきた。
「なんだ!? これは!? これが妹を感じているということなのか!? じゃあ!? まさか!? これはアリアの心臓の音!?」
僕の耳に妹の心臓の音が聞こえてきた。
「こっちか!?」
心臓の音のする方へ歩いていく僕。
「ドクン!! ドクン!!!」
妹の心音は大きくなっていく。
「ここは!? 901!?」
妹の心臓の音はファッションビルの渋谷901から聞こえてきた。
「この中に妹の心臓がある!?」
僕は確信した。このビルの中に必ず妹の心臓があると。
「でも、どうやって中に入ればいいんだ?」
そして無意識に建物の中を透視するかのように想像する。
「あった! 妹の心臓だ!」
イメージの中で妹の心臓を見つけた僕は建物の中に入りたいと願った。
「ここは!? 建物の中!?」
気が付くと僕は建物の中にいた。透明人間のような、壁をすり抜けたような、テレポーテーションで瞬間移動したような、とても超能力は不思議な力だった。
「やったー! 妹の、アリアの心臓だ! これで妹を生き返らせられるぞ!」
僕は心臓に手を伸ばした。
「渡さない。」
その時、どこかからか声が聞こえた。
「なんだ!? この不気味な声は!?」
周囲を見回すと大きな黒い雲が周囲を覆っていた。
「渡さない・・・・・・心臓も私のものだ。」
「まさか!? これが心無!?」
僕は初めて心無を見た。
「心無とは、人間であって人間ではない。人間の諦めや絶望が呪いを生み出した姿。人間の怨念のようなものだ。そして、悲しい存在だ。」
占い師の言葉を思い出した。
「渡さないぞ・・・・・・ここにある物は・・・・・・すべて私の物だ。」
心無は、雲状から黒い少女の姿に変化していく。
「これはサイキック・インスピレーション!?」
次々と901の少女の心が無くなっていくストーリーが僕の心の中に流れてくる。
「わいー! 901だ!」
少女は901を見て感動して涙を流していた。
「カワイイ服がたくさんある! カリスマ定員さんだ! すごい! テレビで見た世界がここにはあるんだ!」
少女は901に来れたことを心から喜び幸せだった。
「今日が最後だよ。お父さんの仕事で私たちはアメリカに引っ越すことになったんだから。」
「嫌だ!? アメリカになんか行きたくない! 私は901に残りたい!」
これが生きている女の子の心が心無になった原因だった。
「可哀そうに。もっとここで遊びたかったんだろうな。それで心だけ、心だけ、ここに置いていったんだな。」
僕は女の子の悲しみに触れて、心無に共感して涙を流していた。
「願え! 汝の願いごとは叶えられる!」
願い事は超能力で叶えられると占い師は言った。
「悲しみは僕が振り払う! 悲しみなんか! 消えてなくなれ!」
超能力で生み出した剣が現れる。その名もサイキック・ソード。
「くらえ! 悲しみ! これが僕のサイキック・スラッシューだ!」
超能力の剣で心無を斬りつけた。
「ありがとう。お兄ちゃん。」
901少女の心無しは悲しみと共に消え去った。
「大人になっても、純粋な心を忘れないで。」
心無とは、感情を表に出さなくなった人、他人を思いやるより自分の利益を優先する人、自分の立場で弱い者をいじめたり、パワハラしたり、セクハラする様な大人のことを指すのかもしれない。
「これがアリアの心臓!?」
「ドクン! ドクン!」
僕はディスプレイされている妹の心臓を手に入れた。
「会えたね。アリア。必ず僕が生き返らせて見せるからね。」
「ドクン! ドクン!」
アリアの心臓は喜んでいるように鼓動を速めた。
「おかえり。アース。」
僕は占いの館にアリアの心臓を届けに来た。
「ドクン! ドクン!」
アリアの心臓は生き返りの人形に吸収されるように人形の中に吸い込まれて見えなくなった。
「生きてる。アリアは生きているんだ! 絶対に全ての体を取り戻して、僕はアリアを生き返らせて見せる!」
僕と悲しみの戦いは始まったばかりだった。
つづく。
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