第10話 両親との別れ

「お父さん、あ母さん、安らかに眠ってね。シクシク。」

 真理亜と楓はウイルスに感染して死んだ父の慎太郎と母のひばりが眠るお墓の前で目を閉じて手を合わせて冥福を祈る。

「やったー! これで宿題しろ、勉強しろとうるさく言われないで済むぞー! アハッ!」

 姉は両親が死んだことも前向きにポジティブに受け止める。

「安心して、お父さん。お母さん。お姉ちゃんには宿題と勉強は毎日やらすからね。アハッ!」

 良く出来た妹であった。

「そんなアホな!?」

 妹だが新しい姉の親代わりである。

「でも、これからの私たちの生活はどうなるんだろう? 無事に楓からウイルスを除去できるのかしら?」

 先が見えないので不安になる真理亜。

「大丈夫だよ。お姉ちゃん。笑っていれば何とかなよ。アハッ!」

 妹が姉をなだめる。

「そうだね。笑っていれば何でもできる。1、2、3、アハッ!」

 非常に扱いやすい姉である。

「これからの真理亜ちゃんとウイルスとの戦いは過酷なものになるでしょうね。世界中に散布されているウイルスを取り除けるのは真理亜ちゃんだけなんだから。」

 姉妹の様子を見ていた真理亜の拳のコロナちゃんは、世界を救うワクチンの抗体を体内に持つ真理亜の今後の激しい戦いを想像していた。


「世界の人口が50億人まで減った。」

 そうなるのに時間はかからなかった。世界中でウイルスに感染して死亡していく人のスピードが上がっているのだ。

「ギャアアアアアアー!」

 それに突然変異で人間がウイルスモンスターに変化してしまい、物理的にも人間を襲い殺し死者の数が急速に増えたのだ。

「ドカーン!」

 世界の各国は軍隊を導入してウイルスモンスターと戦闘を繰り広げる。戦車や戦闘機など火力で殲滅を目指したのだが、ウイルスモンスターの壊滅には至らない。

「助けてくれ!? 俺は感染していない!? 俺は人間だ!? ギャア!?」

 問題はウイルスモンスターの元は人間で街中に出現するので、街並みを破壊してしまうので軍事兵器は使用しにくいという弊害があった。

「おはよう。」

 そして慣れとは恐ろしいもので、人間はウイルスが世界中に拡散する前の普通の生活を送ることにした。

「おはよう。昨日のテレビおもしろかったね。」

 人間はウイルスに諦めた。諦めて、普通に学校に通い、普通に会社に出勤し、経済を動かすことを優先した。ウイルスに感染したら人間として、素直に死ぬことを受け入れて。

 つづく。

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