第3話 決して離さない!

「私の手に楓のウイルスが集まってくる!?」

 姉の真理亜が握っていた妹の手からウイルスを吸い取るように自分の手に集めていく。

「楓の症状が良くなっていく!?」

 発熱で真っ赤だった顔は赤みが薄くなっていく。

「こい! ウイルス! 私に感染しろ!」

 真理亜は覚悟した。

「私はどうなってもいい・・・・・・私が楓を救うんだ!」

 自分は死んでもいいと姉は妹のウイルスを更に吸い上げる。

「ギャアアアアアアー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 大量の人間を死に追いやっている殺人ウイルスが真理亜の全身に流れ込んでくる。

「死ぬ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 焼けるような高熱、人間の細胞がプチプチ壊れていく音が聞こえてくるようだった。真理亜も自分が死ぬことを分かっていた。

「負けるもんですか! ウイルスなんかに私の大切な家族を奪われてたまるか!」

 両親を殺され、次はウイルスに妹まで殺されようとしている。

「この手だけは離さない!」

 妹を救いたいという姉の強い思いがウイルスに勝る。

「ウイルスなんて、クソッくらいだー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 真理亜の中で何かが目を覚ます。

「うおおおおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 人であり人ではない覚醒。高熱のオーラを放ちながら全身のウイルスが真理亜の手に集合する。

「はあ・・・・・・はあ・・・・・・ウイルスが収まった?」

 真理亜の全身のウイルスは片手に集中した。

「ああ!? 手がボロボロだ!? 花の女子高生になるのに・・・・・・。」

 ウイルスに感染して高熱の大やけどしたような手以外は健康な体の状態になった。真理亜の気持ちはブルーになる。

「すうすう・・・・・・すやすや・・・・・・。」

 6才の幼稚園児の妹の楓は何もなかったかのように疲れて眠っている。

「生きてる! 楓が生きてる! ハハッ! 良かった。」

 妹のウイルスは姉に感染したことによってウイルスが薄まって一命を取りとめた。

「楓、お姉ちゃんは、この手を離さなかったよ。アハッ! ・・・・・・バタッ。」

 妹の安否を確認して安堵した真理亜は緊張から解放されたからか、気が抜けてしまい、その場に倒れ込んで気絶する。

「ガー! ガー! ガー!」

 疲れ果てて眠り込んだ姉の手はしっかりと妹の手を握っていた。

 つづく。

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