第2話 家族の最後

「ただいま! お母さん! おやつは何? アハッ!」

 真理亜は自宅に帰ってきた。

「シーン。」

 しかし返事はない。

「あれ? 誰もいないのかな? お父さん? お母さん?」

 特に気にせずに家の中に入っていく真理亜。

「お父さん!? お母さん!?」

 両親は苦しそうに家のリビングで倒れていた。

「どうしたのいったい!? 何があったのよ!?」

「私たちはウイルスに感染してしまったみたいだ・・・・・・バタッ。」

「真理亜、無事で良かった・・・・・・楓を頼んだわよ・・・・・・バタッ。」

 両親は動かなくなった。

「え? 嘘? お父さん!? お母さん!? 何とか言ってよ!? な、なんなのよ!? ウイルスって!? あれは中国の話でしょ!? みんなでオリンピックの開会式に行くって言ったじゃない!?」

 真理亜は両親を揺するが返事をしない。両親は新型コロナウイルスに感染して、ただの屍になってしまった。

「イヤー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 両親を亡くした娘の悲鳴が家の中に響き渡る。力を失くし呆然と座り込む真理亜。

「お、おかえりなさい・・・・・・お姉ちゃん。」

 妹の楓がフラフラながらも退避していた自分の部屋から、真理亜の悲鳴を聞きつけてリビングにやって来た。

「楓!?」

 楓を見つめて、正気を取り戻す真理亜。

「まさか!? あんたもウイルスに感染しているの!?」

「分かんない・・・・・・でも体がポカポカしてフラフラする・・・・・・バタッ。」

 目の前でウイルスに感染していると見られる妹が倒れ、慌てて妹に駆け寄る姉。姉は妹の手をしっかり握る。

「楓!? 大丈夫!?」

「お姉ちゃん・・・・・・楓、死ぬの?」

「え?」

「お姉ちゃん・・・・・・死にたくないよ。」

「な、何を言っているのよ! 楓は死なないわよ!」

「本当?」

「本当よ! お姉ちゃんが言っているんだから本当よ! アハッ!」

「真理亜おねえちゃん・・・・・・大好き・・・・・・バタッ。」

 ニッコリ笑って妹は気を失った。

「楓? 楓? 嘘でしょ? 起きなさいよ? 楓!? 嫌よ!? 誰か楓を! 妹を助けてー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 妹を助けたいという真理亜の悲痛な叫び声。

「キャア!? 何!? 体が熱い!? 体から熱が噴き出してくる!? まさか!? 私もウイルスに感染したの!?」

 感染者の妹に触れていた濃厚接触として、遂に真理亜もウイルスに感染した。

「ダメ! まだ私は死ねない! 妹を! 楓を助けるんだー!!!!!!!!!」

 その時、人の思いは奇跡を起こす。

 つづく。

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