第3章 第11話 ミソロジー
攻撃の効き難い たま がアーリーンの爪で引き裂かれる。
医学の心得がないものでも容易に判断がつくだろう。
致命傷だと。
「たま に何をするきさまぁあああ!」
べリアの怒号が響き岩をも断ち割る戦斧が叩きつけられる。
アーリーンは涼しい顔で受け流そうと構える。
が、受けた瞬間に受け流し切れない事を理解した。
態勢を崩さず
しょせん ’鎧に頼る隙だらけの斧戦士’ だろうという判断が間違いと気付く。
「邪魔をするな! この猫だけは確実に殺す」
「うるさいっ! 早く、早くしないと たま が死んじゃう!」
アーリーンは長き時を戦の経験と鍛錬で生きた不死の英雄である。
実力から言えば天と地ほどの差があるだろう。
だが、しかし。 戦いには流れがある。
勢いが流れを作り、老練な判断は押し流される。
べリアには[狂戦士]というスキルがある。
敵味方の区別がつかず暴れまくるアレだがそれだけではない。
使いこなせば、勝ち目の無い敵に怯え委縮することなく
己の体の構造を鑑みる事無く、戦いたいように戦えるのだ。
「ガアアアアアッ!!」
「ぐうっこいつ、只の激昂した力自慢かと思ったら……」
普通、戦斧のような長物の先に金属の塊が付いているような物は振り落とすか振り回すかのどちらかになる。
当たらなければどうということはない、と紙一重で回避するとべリアの斧刃は軌道を変えてくるのだ。
「たま をなんとか回復しないと」
「べリアがイッちまってるから下手に近づけんぞ」
「ボクが行きます」
「へ? お、おい。
あんたも相当やべえじゃねえか」
魔力の鞭に捕らえられたままの たま へ勇者カスミが向かう。
引き裂かれ
すると存在を掻き消したように魔力の鞭ごとその姿が消失した。
「消えたっ!?」
「えっ回復魔法かけに行ったんじゃなかったの?」
「ガアアアアア……えっ? たまぁっ?」
「勇者きさまぁっ、猫を何処へやった!?」
「神降ろしですよ、彼は旅の仲間ですが依頼の参加者じゃない。
外野には休息が必要なようですからね」
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かみさまってこんなにしょっちゅう会えるもんなんだろうか?
三回目のかみさまでみんな違うかみさま。
かみさまって一人じゃないの?
『
『でしょでしょご主人様』
あ、ねこかみさま。
『本当に答えを欲しているかはわかりませんが、答えるならば全を
「??」
『……わかりやすく言うと偉大な存在が必要とされていれば神は全を持ち、全ての物事に意味があると信じ物事を通して感謝をする場合身近であればあるほど信仰が豊かになるのです』
『わかりやすくないよ』
『ご主人様こいつはかみ砕けばいいってもんでもないにゃ』
『……私は偉くて全能ですけど、色々な役割の神もいます』
『なるほど』『わかりやすくなったにゃ』
『まずは傷を癒しましょう』
そうつぶやくとかみさまは小さな声で歌いだした。
でっかくて上品なおばさまって感じの割には低い声。
でも落ち着いた感じですき。
空中に羽の生えた人型の光の塊が生まれ出る。
虫みたいなので捕まえようとするが器用に避けられる。
虫が光の粉をまき散らし傷に吸い込まれていく。
かみさまの歌声に合わせてくるくる回ったり上ったり下りたり。
『……虫ではありません、私の可愛い天使たちです』
『妖精にゃ』
結局、ユウシャは何で僕をかみさまのところに送ったんだろう?
かみさま医者がわり?
『そうですね、そこから話しましょう。
勇者カスミは
ミソロジーに触れるものとして普通すぎるからです』
『みそ?』
『言い伝えとか
『世界の運命におけるミソロジーへ関わる魂は決まっています。
それが勇者であり魔王。
そして今現在ミソロジーは死神たちによって混乱しているのです』
『勇者…死神…うっ頭が』
『
『影のついたエルフのこと?
戦いを挑んで負けたんだからそれはしょうがないよ』
『’けもののおきて’ ですか。
ですがサンアトスが
縄張りを奪う為でも食う為でもない。
魂を奪う? そういえば「運命を狂わせ輪廻から外した」とかなんとか……もう死んでるとか……勝ったも同然の状態でやたら僕を殺すことに拘ってたような……
『あ』
『え?』『あにゃ?』
『ああああっ!!』
『えっえっ?』『にゃにゃっ!?』
思い出したああああ!!
前の世界でも死神に目を付けられてるって言われてた!
あいつ前世の仇だ!
『ああ……今気づいたのですね。
そうです、あなたを輪廻の
死神の管理者は神界、神は
『貸しは返してもらったよ? この世界に連れてきてくれたしすきるも貰ったでしょ?』
『ええ、ですがそれは生きていく為の力。
死神へ対抗する為にはとても足りません、
え?
今なんて言った? ユウシャも?
『気付かれてらっしゃらなかったのですね。
カスミは
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