第3章 第7話 真心の叫び
精霊窟は夜も更けず、朝も明けない。
風の精霊に尋ねれば、人間が精霊窟に入り二晩を越えようかという時間らしい。
地下湖には波もなく、嵐も来ない。
時折り船ごと飲み込もうと巨大な水棲生物が襲ってくるぐらいだ。
ベリアとドワーフたちでなければ飲み込まれたかもしれない。
ベリアが斧使いと伝わると斧ならと技比べとなったのだ。
船が目的地に到達し、整えられていない坑道へ案内される。
自然洞窟に行き当たり洞窟から表に出る。
「ほれ、客人。 ここが大陸の内地イヒルギの守護森だ。
あ、族長早いっすね」
「当たり前じゃ、彫金
さて人間、説明するぞ覚悟は良いか?」
ベリアの胸甲、戦斧、手斧、ロッタンの長剣、ナイフ、盾。
それぞれ彫金装飾、ものによって鍛え直しとなった。
装飾は
「この模様は? すごく綺麗……怖いくらい」
「
精霊たちがあちこちで歌ってたじゃろ?
武装具の役割に沿った
胸甲などは凹みや傷があったにも関わらず、体型にフィットし防護範囲が大幅に増えたようだ。
その上ベリアには全体的な重量がかなり軽くなったように感じた。
「そいつは今回の傑作だな、強度剛性ともはね上がってるぞ。
重心分散もしておるから中に重ね着してもいいやもしれぬ」
「あわわ、なんか伝説の装備って感じ?」
「ベリアの戦斧もそうだが、俺の長剣も柄部分をだいぶ変えたな。
お? 持ちやすい」
「人間の鍛冶師の悪い癖でな。
槍とかならいざ知らず、斧や剣の場合柄が棒では未完成なんじゃよ。
斧頭を振り回す……ではなく断ち切る使い方では形状も異なる」
[ ガサ ガサ ]
バザーム達がいる広場の隅、低木の茂みから猫の集団が現れた。
護衛達は魔獣の襲撃を警戒する。
猫たちは遠巻きに鳴き声を交わし一匹を除いて去っていった。
「ぅなあ〜おおおおおう」
「!?」「ああっ? たま? うそっ」
「ああ……連れなのか。
行っていいぞ」
「にゃう」
_/_/_/_/_/
ユウシャたちが通るというドワーフ窟の出入り口に着く。
確かにドワーフたちが出入り口を警護している。
しばらく注視していると、ユウシャたちが出てきた。
『
『う、うん。 ありがとう。
サリョウの父様にもものすごく感謝してたって言っておいて』
『もちろんよ!
[伝心]で
『へ……へえ便利だね』(リマにはお世辞とか冗談は通じないな)
『なんですって!』
『ななななんにも言ってないよ?』
『では我らはこれでナワバリに戻ります。
我らの助けが必要な時はリマへ強く念じていただければ駆けつけてまいります』
『我慢しないで困った時は呼ぶのよ!』
『でも僕の使命すらわからないし、
『その時はお父様に決めてもらうわ!』
―――――
サリョウの一族と別れ
……もうそろそろいいかな?
身体に溶けたボールを片付ける。
強化されていた四肢から緊張がほぐされていく。
来た……ずしりとした倦怠感が襲ってくる。
心臓はうごいてる、よし。
手足は身体をささえている、よし。
心は……ココロは?
強化魔法で抑え付けていたココロが破れてあふれてくる。
「ぅなあ〜おおおおおう」
「!?」「ああっ? たま? うそっ」
『どうして?
どうして僕を置いて行っちゃったの?
死んじゃうかと思ったよ、辛かったよ。
捨てられたんだと思ってすごく寂しかったんだ。
うわああああ! わあああああん!』
ベリアのスネに爪を立てて引っ掻く。
必死に撫でてくる指先に頭をこすり付ける。
心配そうに覗き込んでくる顔を舐めつける。
―――――
強化なしで暴れまくり、電池の切れたおもちゃのように僕の身体は沈んだ。
ベリアが抱き上げてくれて今度は置いていかれずにすんだ。
山を越え(越えたのは僕だけだけど)再び旅の続行になる。
[ ふみ ふみ ]
ベリアの兜に乗っかり掴まったまま居眠りするのではなく、抱きかかえられたまま眠って運ばれる。
こうしていると赤ん坊の頃を思い出す。
「あはは、たま がおっぱい揉んでる」「なにぃっ!」「?」
「……ベリア、それはずばり仔猫の時の名残で授乳で母親の乳を搾り取ろうとしてるんですよ」
「なんだー、でもそれはそれで可愛いな。
……あの時のシェギも?」
「!@#$%^&*!!」
「
「……」「……」「……」「……」
あれ? めずらしくユウシャ以外にも伝わった。
これでゆっくり眠れるよ。
シェギは頭はいいんだけど、いつも一言おおいんだよね。
だまってればもっとそんけいされるだろうに。
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