第2章 第4話 野生の連携
冒険者ギルドの朝。
依頼が張り出され気の早い冒険者たちが依頼を選び始める。
「そういえば昨日から たま いないですね」
「うう、寂しいよう」
「いつの間にか
懐いても野良は野良ってことじゃね?」
依頼書を見ていくと、やたら害獣の討伐が多いようだ。
魔獣化もしていない単体の害獣退治は
だがアックスヘッドとしては物足りない依頼ばかり。
ならいっそのこと銅等級になったばかりの冒険者と組んで鍛えるという考え方もある。
「おや? 君はブラックウルフの……」
「シェギさん、おはようございます。
アックスヘッドも依頼チェックですか」
「ネウロ君でしたかね。 弓の子は?」
「あ……アルは引退しました、ブラックウルフは解散です。
俺は昨日、知り合った子たちに入れて貰ったんです」
奥にいた子たちを軽く紹介される。
チーム名は[アイアンワンド]、剣2魔1僧1の構成らしい。
僧侶らしい子は木等級で神殿に行ってなさそうな少女。
冒険者ごっこをしに兄に付いてきたように見えなくもない。
「
討伐依頼がやたら多いですし、能力に応じた敵を数受ければお互いいい稼ぎになりますよ?」
少なくともネウロはアックスヘッドの実力は把握している。
実入りの良いこと、良い経験になることはわかるだろう。
対してアイアンワンドの3名は上位チームとの混成行動には警戒を示す。
「ちょっと相談してもいいですか?」
「勿論です、最悪昼頃適当な依頼を取るでも問題ありませんから」
ロッタンとベリアに事情を説明し、ギルド酒場で朝飯を取る。
ネウロのアックスヘッド活劇譚が繰り広げられたあと合意が得られたようだ。
「剣…のジョンです」
「魔法使いのソニアです」
「
……冒険者パーティの回復役といえば僧侶か回復術師が普通だ。
常識的にいえば薬草の知識があるただの人だろう。
「宜しくね、んじゃ依頼探してくるけどどのくらい身体強化覚えてる?」
「ネウロさんだけですが、他は
「あらそう? じゃあ依頼とってくる」
「
木級で薬を持っているって……自作ですか?」
「勿論です、木等級の依頼は薬草採取が多いですからついでに多目に採ったりして余ってますね、普段遣いなので困りませんけど」
おわかりいただけただろうか?
[普段遣いなので][普段遣いなので][普段遣いなので]
身体強化の魔法は身体強化スキルと効果が重ならない。
だが薬品強化ならば効果を重ねられるのだ。
それ故に魔法持ちにも、スキル持ちにも需要がある。
いざという時の切り札になり得るのだ。
「常用するってことですか?
薬効は乱用すると耐性が出来てしまうと聞きますが……」
「同じ薬効を摂り続ければそりゃあ効きは悪くなります。
クコの実くらいは有名だが出てきた種類の多さにみな感心する。
しばらくしてベリアが依頼書を取ってきた。
「4つ……しかも群れ討伐ばかりって多すぎませんか?」
「いい若いもんが何いってんの、いけるいける。
アグムルの田畑管理してる
近いし経路考えればひと周りでカタが付くわよ」
「ベリアは実戦詰め込み教育好きだからなあ、後衛はともかく剣は振ってなんぼだし、度胸が付くのは間違いねえやな」
「そういうこと。
楽しいお仕事の始まりだよ~!
農村ホトリまで出発進行ー!」
慌ただしく出発するアックスヘッドとアイアンワンド。
道草を摘み、集団に戻るを繰り返す。
薬草採取である。
警戒担当のシェギにとって戦闘職顔負けの足の疾さで道草を摘みまわられるのは気が散るので
だが
_/_/_/_/_/
『おき、て!』
喉笛にばっくりと噛みつかれて、反射的に目が覚める。
タンビのじゃれつきの甘噛みとわかりホッとする。
昨日の今日だし連続訓練は疲れが溜まってるなら今日はやめて一日ずっとねてようかとも思っていた。
タンビはすっかり疲れが取れているようだ。
訓練なしならなしで遊び相手にされそうである。
爪をひっこめ爪と顔を洗う、伸びをして体の調子を確かめる。
やばい、僕もぜっこうちょうだ。
『たま さん、きょうは、狩りする、の?』
『うん、疲れが溜まっていない猫たちでまた行こう』
『じゃあ、また行けそうな猫たちに声を掛けてきますね』
タンビママがしっぽを立てて参加者を
彼女も昨日うずうずしてたし暴れたり無いんだろうなあ。
門の方に歩いていくと、またエリーが来ていた。
『今日も行くのね!
あんたたちだけじゃ心配だからついていってあげるわよ』
やはりなんというか猫族は狩り好きのようだ。
僕はずっと眠ってたいけど。
連携訓練なので見守り役と伝えたが納得して付いてくるようだ。
おやつ代わりに土鼠やスナトカゲを狩りながら街の外周をグルリと回るが連携訓練にちょうど良さそうな獲物が見つからない。
仕方がないので若干遠出することにする。
今日の目的は狩りよりも戦闘経験重視で、中でも連携訓練が重要なのだ。
午前中の狩りで追加の食料
街道の横を走っていると獲物の気配を見つけた。
『エリー、あれどう?』
『コウラザルじゃない、引っ掻きがいがないわね』
『人間と協力すればいけるんじゃないかな』
「みぎゃー!」
疾走していた猫グループに号令を掛け停止させる。
この位置だと商隊にも、猿にも聞こえているだろう。
「にゃんにゃん、うにゃうにゃ、にゃう」
「なーお」「なーぉ」「なーお」
敵は8匹ほど。
コウラザルは甲羅に覆われた小さな二足歩行のけものである。
賢い部類のけものだが爪も牙も大したことはない。
ただし石つぶてや棒きれを振り回すことはある。
怖くはないが弱点の腹側を隠すように戦うため狩りやすいけものでもない。
敵前会議を終え戦闘開始。
まずは荷馬車側の2匹。
背中側へ周り前傾姿勢の背骨に飛び乗り、後ろから目隠しをするように前足をまわし爪を滑らせる。
つまり、背後からの眼球切り裂きである。
敵にしてみれば死角から背中を襲われて、守りが厚いので安心すると目に爪を突き立てられそうになるのだ。
たまったものではないだろう。
「キーッ!」「ウキーッ!」
「さっきの猫か? 取り敢えず隙が出来たな……シュッ」
< ドスッ >
「ウキャァアアアア!」
護衛の冒険者が上体を上げたコウラザルの無防備な下腹へショートソードを突き入れる。
次々と猫の影がコウラザルにまわりこみ背中を猫キックする。
反応が遅れれば目をつぶされ、背中へ手を回せば下腹を晒してしまう。
人間が隙をうまく突いてくれたため、順調に数を減らせた。
2匹ほど逃げたが負傷者なし。
目を破壊した獲物の腹をちょっと食べてみるが味はいまいち。
エリーも他のみんなも食べる気にはなれないようだ。
「凄えなあ、猫に助けられたのは初めてだぜ。
えーと、小麦パン食うか? こーいこいこい」
小麦パンはいつもなら鼻も引っ掛けないが
< もぐもぐ >
うん満足。
「うにゃ!」
次行くぞの号令にみんな訓練されたように俊敏に反応する。
みんなで狩るのが楽しくなってきたんだよね、うんわかる。
僕も僕も。
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