第14話✵悲しみは止まらない✵

ヒカルに告白されたあの日の帰り道

二人はほとんど会話もないままだった。


部屋に戻った途端に涙が溢れた、ヒカルはどうしちゃったんだろう

私を置いて何処に行っちゃうのだろうか?


手も触れなくなったのは半年くらい前からだった、きっとその前に洗脳されてしまったのだろう。


そして今でもきっと私を愛してくれてるからなのだろうと思う、そんな風に彼を追い詰めてしまったのはきっと私なのだ……

私がきっかけになったのだから救うのは私なのだとその頃は強く思っていた。


次の日からその宗教のことを色々と調べてみた。


「先生この宗教のこと知ってますか? 」


職場の院長に聞いてみた


「まさか入信したいとかじゃないよね、それなら全力で反対するけど、それにその宗教に入るなら覚悟しないといけないことたくさんあるよ 」


例え身内でも他の宗教の葬式などでお線香をあげることも禁止されているし、神社仏閣に出向くこともならないとされている

そして瀕死の状態であっても輸血することは決して許されないということなのだった。


もしも自分の子どもが病気や事故のために医師に輸血を勧められても断るのだろうか?

助かる命を見殺しにすることさえしか出来ないのだろうか?


私はたくさん調べたし、なるべく知らない宗教に偏見を持たないようにしたかった。


でも調べれば調べるほど私には到底受け入れることは出来ないと感じていた。


好きなのは変わらない、まったく変わらないのに真剣な眼をしていたあの日のヒカルを思い出すと途方に暮れるしかなかった。


宗教は自由

きっとそうなのだとわかってはいる。

信じる宗教が違っていても結婚して幸せに暮らしている人だっているのです。

でも、ヒカルが出会ってしまったその宗教は他の宗教をまったく認めていない、洗礼を受けた人はその後同じ教えを学んだ人としか結婚することは許されていないのだという。

十字架をはじめ,どんな偶像もあがめることはしない。

神に祈る。聖書を読み研究する。

そして聖書から学んだ点を黙想する。

共に集まり合って祈り,聖書を研究し,賛美を歌い,信仰を言い表わし,仲間や友人たちと励まし合う。


私に打ち明けた時のヒカルはまだ洗礼を受けていなかったはずだ、まだ間に合うそう信じるしかなかった。


酷い言葉をヒカルに何度も投げかけた、それに対してヒカルが怒ることはまったくなくなっていた。


優しく微笑むヒカルは私が愛した人とはすっかり違う人間になってしまったのだった。


ヒカルの両親が私との結婚を反対したのは占いによるものだと聞いていたが

息子を溺愛していた母親は私の学歴も気に入らなかったということだったらしい。

大学を中退している息子だから、お嫁さんには大学出の人を選んで欲しかったのだということだった、ヒカルは私に謝った「もっと早くから親に会わせて、ルリのことを認めて貰うべきだった、それはきっと俺が悪い……ごめん」


何度か顔を合わせたこともあったし挨拶などはしていたが、まさか結婚したいと言い出すとは思っていなかったのだろう。

プロポーズされてからの私はヒカルに早く話を進めて欲しいと思っていたのは確かだった、その事こそがきっとヒカルを追い詰めてしまったのだろう。

できることなら時間を巻き戻して欲しいと望んだ、そしてあの頃のヒカルに逢いたい。


この世界の至る所で起きる紛争や戦争は宗教によるものだと言われる。

不毛な争いはいつか終わる時ができるのだろうか?

そんなことまで思いを馳せた。

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