第3話✵初めての夜✵
カーステレオからは忌野清志郎の曲が流されていた。
店の中でいつも流れているのは古いJAZZのレコードばかりだったし意外だなと思った。
車の中で二人きりなんて、陽介と別れて以来のことだった、高校生からの付き合いだった陽介と別れたのは1年前のことだった。
お互いに引かれあってたから高校を卒業する頃から会えば必ずSEXをしていた。彼は高校生の頃年上の女性と初めてのSEXしていたから私との初めての夜も自然にKissもしたし、服を脱がすのも手慣れていた、恥ずかしがる私のことなどお構いなしに、強引に乳房に口をつけて優しく愛撫した、愛し合うことの快感を教えてくれたのは陽介だった。どうして別れたいと思ったのかは自分でも理解出来ないのだけど、きっと本気で好きにはなれなかっただけなのかもしれない。別れを告げたのは私からだった
涙まで流されたけど、私の心は変わらなかった、最後の夜も抱き合った、でもそれは愛情ではなくて、感謝のSEXだと思った。
そして私は彼に恋をした。
彼の瞳の奥にある寂しい光に恋をした。
寡黙な彼のことをもっと知りたいと思った。
そして抱きしめられたいと思った。
海へと向かう道は少し山道を超えて行く、その途中にあるコンビニで花火のセットと線香花火を買った。
喫煙出来るスペースで彼はタバコに火をつけた。
ブラックの缶コーヒーの蓋を開けながら、「そういえば名前聞いてなかったよね、俺の名前は草場…草場輝、輝くって字のヒカル」
「そうでしたよね、地元で有名な地主さんだから苗字は知ってましたよ、私は大石瑠璃です、めちゃくちゃ難しい字のルリです」
「読めるけど書けない字だよね」と最初は笑っていたヒカルは
「地主の頼りない跡取り息子で有名なね…」と少し自分に怒りを込めた言葉で答えた。
その言葉でますます彼のことが気になった。
車は海へと走り続けた、カーステレオの忌野清志郎の曲は私の知らないバラードに変わっていた。
ぼくら夢をみたのさ
とても似たような夢を…
その曲は私の心に優しい傷のような印をつけた。
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