第15回 書き出し祭り/4-14『小さな悪の華』感想

※小説家になろう様にて開催中の、第15回書き出し祭り参加作品への感想です。



やはり文字数の問題だったのですね。気付かずに改行の話ばかりしてしまって申し訳ありませんでした。

4千字めいっぱい使ってまとめ上げた超大作。間違いなく濃密な読書体験でした。

何度読んでも海外の作者様がお書きになられた翻訳ものを読んでいる感覚に包まれます。

細かく丁寧な描写は、どう頑張っても真似できそうにありません。

十三歳の少女がこんなにも辛い環境に置かれ、更なる苦難と葛藤が待ち構えているかと思うと、胸が苦しくなりますね。

あらすじから想像するに、この物語はハッピーエンドでは終わらないでしょう。

いわゆるメリーバッドエンドというところに落ち着くのかもしれません。

きっと主人公は死体の転がる路地から出てきた少女との交流を経て、世界を知るのでしょう。

母親を守り、父親を排除する方法を得るのか、そこまで行きながらも思いとどまるのか。

現代日本とは異なる常識、環境下での出来事を語っていますから、おそらく一般的な日本人は自分と主人公を重ねるわけではなく、そういう世界もあるのだと客観的に物語を読んでいくことになるでしょう。

その点において、この翻訳ものめいた書き方は効力を発揮しているように思います。

少し読者と距離を感じる文章が、主人公と読者の同一化を自然に阻み、客観性を保たせているように感じました。


客観性を保っているからこそ、この作品は主人公と読者を同一化し、無双であったりざまぁであったり恋愛であったりで爽快感や満足感を与えるタイプの作品とは全く別の場所にあります。

小説家になろうのランキングを眺めていると、たいていが主人公が読者の願う楽しく幸せで爽快なものを与えるタイプのものなので、Webの海で読まれる物語ではないでしょう。

本屋に並び、タイトル、あらすじ、中身のパラ読みなどを経て書籍を購入してくれた読者に刺さるような作品を目指すものだと思われます。

そうなると、今のあらすじでは弱いように感じました。

おそらく今時の説明調タイトルがあまり好みではない作者様なのではないかと推察しますので、そうなると購入してくれる方へのアピールは主に裏表紙のあらすじになるでしょう。

違法な商売とぼかすより、身体を売って生活していたと書いてしまった方が吸引力が高そうです。

謎の少女に囁かれ、リスベットが何を思うのか、どちらの方を向くのか、全体的な物語の流れがどうなっていくのかを予想・予感させる文面をあらすじに入れ込んでおいた方が、その匂いに釣られて続きが、ラストが読みたいと思わせてくれるのではないでしょうか。

作者様のこだわりによって仕上げられた素晴らしい文章だと思うので、文体を読まれるように寄せるのではなく、そのままの文体でいきながらもなるべく多くの人に読みにきてもらえるよう、呼び込むための工夫を可能な限り仕込んでいく方がいいのではないかと思いました。

素敵な作品をありがとうございました。


南雲

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