南雲の脳内

第15回 書き出し祭り/1-9『もう一度、お姉さまの微笑みを』感想

※小説家になろう様にて開催中の、第15回書き出し祭り参加作品への感想です。

Web連載想定とのことで、これは百合好きにどんどんアプローチしていくべきなのではと思っています。

何と言っても百合ですよ。絶対的な庇護者である“お姉さま“によって大事にされている薄幸の主人公。

それが相思相愛、結婚前提のお付き合いをしているのだと冒頭から明示されているわけで。

おそらく主人公は最愛のお姉さまの命を助けるために数々の困難を乗り越え、主に精神面で成長し、上位者であったお姉様さまと対等な立場に立てるようになって彼女の隣に立つのでしょう。

守られるだけだった弱い少女が、最終的に『今度は、私がお姉さまを守ります』みたいな。エモの極みですね。

王道のラインに乗せられる、いい設定だと思います。

そこに“魔法”という要素まで追加され、大量のごちそうが並んでいる状態ですね。ごちそうさまです……。

使い魔の猫、ラナも主人公のサポート役としてしっかり支えてくれそうな予感がしますし、最高ですね。

そんな素敵な設定であるが故に、駆け足な部分がもったいないなと感じました。

玲花と茉里奈というメインに据えられているカップルのいちゃいちゃが、きっと読者はもっと見たいだろうなと。

ストーリーの大半は、おそらく死んでしまった玲花を助けるために力を付ける茉里奈の話になるでしょう。

その間、玲花は死人であり続けるわけです。

回想シーンとして玲花との幸せな時間が度々挿入される可能性もありますが、現状の書き出しだと、せっかくのメインカップルの相思相愛っぷりが読者の前に並びません。

メニューだけ手渡され、料理がなかなかこない感じです。

それに付随して、二人の結び付きをそこまで見ているわけではないので、玲花の死を読者があまり悲しめません。

書き出し祭りに載せる部分に玲花の死を入れたかったのかなと感じていたのですが、連載する意志がおありなのでしたら、玲花の死はメインカップルの幸せないちゃいちゃをワンシーンでも見せてから持ち出す方が効果的であるように思います。

だって、もはや依存とも呼べるスブズブの百合カップルですよ？

その二人がいちゃいちゃしているのをウフフと読んでいたらまさかの偽装結婚。

いやそれも二人の幸せのためだと何とか納得してみれば、次に出てくるのは妊娠！

怒涛の展開ですが、おそらくここで多少なりとも読者の方はふるいにかけられるかと思います。

偽装結婚までは許せても、妊娠・出産というワードは抵抗のある方がそれなりにいそうです。

性的な関係を持たずに妊娠しているようですが、その辺りも、結婚に際して義務を説明された夜、『お姉さま以外の方を受け入れることなんてできません！』と泣く主人公を、『大丈夫よ、普通の妊娠とは違うの。貴女の身体は私だけのもの、そうでしょう？　安心して、魔力の篭った薬を飲むだけ。貴女の中に私以外の魔力が満ちるのは癪だけれど、それも一瞬のこと。産み落としたらすぐに私の魔力を注いであげる。だから安心して』みたいな、説明しつつのいちゃいちゃシーンがあるとその辺りの抵抗感が少しはフォローできそうな気がします。

私は百合過激派ではないのであれなんですが、百合界隈は結構過激派が多い印象ですので……こまめに丁寧ないちゃいちゃを入れ込んでいく方が安心できるかなと。

同時に敵か味方か描写されていない偽装結婚の相手の方々も、具体的な形で読みたいです、是非。

敵にしろ、味方にしろ、どこかで裏切る味方にしろ、絶対にいいキャラであるに違いないですもの。

書き出し祭りにお出しになった４千字に詰め込んだエピソードを、それぞれ深掘りして描写し、そこから余分なものを削ぎ落として完成させていくのがいいのではないかなと思いました。

妄想しがいのある百合カップル、ありがとうございました。

南雲