第15回 書き出し祭り/3-18『触るなキケンの聖女様とお飾り騎士の探偵業(ディティクティブ)』感想

※小説家になろう様にて開催中の、第15回書き出し祭り参加作品への感想です。



公募用にブラッシュアップするとのことで、大変楽しみです。

何と言っても設定がいいですものね。

騎士団において己の正義を貫いたことでエリート街道から弾き出されたやや脳筋気味の男性主人公と、おそらく彼の中の正義と力について考え直し成長していく原因となるであろう理知的と見せかけてこれまたやや脳筋気味の聖女さま。最高か?

しかもその二人のバディが謎を解決していく探偵ものときたら、否応なく期待が高まるというものです。

予想として、ユスティードの中の正義の形というものがストーリーと共に変化し、アイーシャとの日々、そして過去の遺物とされた教会が彼にとって価値のあるものになっていくのではないかなと。

その点においても、成長する主人公とそのパートナーというのは王道と言えるでしょう。

文章も固すぎず、かといって物足りないほどでもなく、やや回りくどいように思える部分もあるかなと思いましたが、全体的には読みやすいなと思いました。


気になる点を挙げるとすれば、展開の持って行き方でしょうか。

ユスティードが聖女の護衛となった経緯が語られるパートの入りが、やや強引というか、唐突に感じられました。

そして、せっかくの売りである“探偵もの”という要素が、冒頭4千字に具体例として出てこないことです。

確かに『神のお告げを聞き、調査を開始する描写』、そして『謎を解決した結果、判明した犯人に対して肉体言語での制裁を加える』という面白い部分はしっかりあるのですが、”探偵もの”と聞いて期待するのはおそらく“謎解き”であるのではないでしょうか。

この辺りは完全に私の好みの問題ですので、いやいや、と思われたら気にしないでくださいませ。


私としては、まず冒頭、いきなりアイーシャの謎解きから始まってもいいのではないかと思いました。

ユスティードが偶然遭遇した断罪の場面。どうやら彼は聖女様が拳で断罪することを知らなかったような様子なので、突然の爆発音、すわ一大事かと現場に駆け付ければ噂の聖女の姿。

『現場に残されていた(あの痕跡/具体的だととても嬉しい)、そして不自然だった(あの発言/具体的だととても嬉しい)、そこから導き出される犯人、それは貴方です!』そしてアストライアー様の加護のもと、正義の鉄槌を下した彼女の拳が(それによってぶっ飛ばされた犯人でもいいかもしれませんが)、主人公の顔面に飛んでくるハプニング。

聖女のあまりにも物理的な断罪に呆然としていた主人公の顔面にクリーンヒットした衝撃で、一瞬意識が遠のく主人公。

そこで(俺はこんな女の護衛にならなければいけないのか?)と回想シーンに飛び、聖女の護衛騎士が左遷であることなどを説明したのち、主人公と聖女の出会いに意識が戻って、そこから改めて、彼女の普段の奇行などが更に明らかになっていって、それに振り回されていく主人公が描かれる、といった展開の方が、出だしのインパクトもあり、聖女の捜査方法について読者が主人公と共に驚いたり困惑したりしていけるのではないかなと思いました。

せっかく主人公が読者と同じ(魔法にピンとこない)目線の人ですから、主人公と共に読者が聖女のことを知っていく、という流れはファンタジー世界に入って行きやすいのではないかなと。


何はともあれ、大変楽しく面白い書き出しでした。素敵な作品をありがとうございました。


南雲

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