第15回 書き出し祭り感想

第15回 書き出し祭り/4-21『無題』感想

※小説家になろう様にて開催中の、第15回書き出し祭り参加作品への感想です。



30,000 字程度の短編で、公募に出されるとのこと。

描写が丁寧で、度々出てくる⽔や⽔の流れに喩えた表現が⼤好きです。

『認知症の祖⽗に唯⼀認識されていた』『⾃分より祖⺟を憶えていてほしかった』『昔の祖⺟のことばかりで現在の祖⺟を忘れ去った祖⽗への憤りを、祖⺟にぶつけてしまった』『祖⽗⺟の幸せを、⾃分が邪魔してしまったのかもしれない』この辺りの要素が、おそらく主⼈公の核⼼の問題に繋がっていくのだろうと推測します。

⼀番初めの⼆つの⽂章。現在の主⼈公の回想の始まり。核⼼の問題を匂わせつつ、綺麗に具体的な内容に⼊っていく流れがとてもいいなと思いました。

会話⽂を早めに出しつつ、そこに祖⽗の優しさと主⼈公の罪悪感をまとめて描写しているのも上⼿いなと思います。

主⼈公にはどうしようもできず、そして祖⽗⺟への罪悪感を抱えながらも逃げられない理由も明⽰されています。

徹底して主⼈公のご両親の描写がありませんから、おそらく主⼈公にとって両親という存在が希薄なのであろうと思われます。

だからこそ、祖⽗⺟への罪悪感が更に増すのでしょう。これも上⼿いなと思います。

重ための題材を扱っているにも関わらず、どこか美しく読みやすいのは、偏に作者様の筆⼒の賜物かと思います。

私もこういうの書きたい。書けない。


全体的な⽂章のレベルが⾼い分、ところどころ少し浮いている?と思われる部分がありました。

本⽂に書き込む形でまとめてみましたので、ご参照ください。(Twitterにあります)少しでもお役に⽴てれば嬉しいです。


主⼈公の核⼼の問題は何なのか。そしてどこに着地し、どんなタイトルを付けるのか。祖⽗⺟の思い出に触れ、主⼈公が⾃⼰の精神と折り合いを付けることはできるのか。 どのようなラストを迎えるのか、⼤変楽しみな作品です。

じっくり読ませていただきありがとうございました。応援しております。


南雲

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