第3話 看護師視点

昼の騒々しさが静まり返る深夜の病棟内を、懐中電灯を携行し、見て回る女性看護師の“吉田”さん。私(吉田)は、たまたまシフトが夕方17時~朝8時までの、いわゆる夜勤を任されていた。


例の酸素ボンベのアラームが鳴らない為に、良樹君がナースコールを執拗しつように鳴らしたが、嫌そうな顔を一つもせず駆け付けて、私は世間一般の男性の描く天使の像に当てはまる女性看護師だった。ちょうど305号室の結愛さんの病室を訪れる時、結愛さんはすすり泣いていた。“何で、何で、私は退院も外出もろくにできないの?”看護師歴4年の私は、決して長く勤めている訳ではないが、こういう場面はよく目にする。不安がる患者を落ち着かせる為に、よくさせる深呼吸を勧めて、落ち着かせようとした。


「ねぇ、結愛さん。どうしてそんなに悲しいの?」

「悲しくない、辛いの」

「何が辛いの?」

「もう1年以上も入院してて、他の患者は半年やそこらで退院してくじゃん。いつになったら、退院できるの?」

「うーん、まだね、身体が本調子じゃ無いのよ。今不安定な体調のまま、退院したら、また逆戻りだよ?それでも良い?」

「........わかった。我慢する、もう少しだけ」

「そうだね!今はゆっくりんで、辛抱しんぼうだね」


私は小さな子供をあやす母親のように、結愛さんをさとした。結愛さんは何か納得のいかなそうな顔で渋々理解したようだった。私は結愛さんの返事が気にかかるが、また、いつものように懐中電灯片手に深夜の病棟内を見て回った。

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