第27話 それぞれの課題3


「ぱあ……」


「「「……」」」


「ぱあ……ん? ここ何処」


「やっと戻りましたね」


「なんなのよあんた! いきなりおかしくなるからびっくりしたじゃない」


「俺の家のスタジオだ」


「俺おかしくなってたの? ていうかスタジオも広いんだ……」


「「「はぁ……」」」



スタークに会いおかしくなったエバが正気を取り戻し、ようやく練習が始まろうとしてた。



「とりあえず各々楽器弾くか?」


「そうですね、合わせる前にちょっと弾きたいです」


「ならそうしましょうか。エバはどうするの?」


「新曲作ろうかなって思ってるんだけど、少し散歩して来ていい? 俺曲作る時いつも音楽聴きながら散歩してるんだ」


「構わねえぜ?」


「エバのやり易いようにやって下さい」


「そしたら私達はエバの新曲が出来るまで適当に合わせたり、個人のスキルアップね」


「ありがとう! そしたら早速行ってくるね」



そう言ってエバはスタジオを後にし、新曲作りを開始した。いつも通りイヤホンをして、自分の好きな音楽を流し宛もなく歩いていた。



(スタークかっこよかったなー。もっとクールだと思ってたけど、意外とフレンドリーだったなー……)



曲作りとは全く関係の無い事を考えながらしばらく歩いていると、小さな空き地が見えてきた。



「少しあそこで休もうかな」


「ジャン! ジャン! ジャラジャラ」


「ん? 誰かギター弾いてるのかな」



空き地の方からお世辞でも上手いとは言えないギターの音が聴こえてきた。



「お!あんな小さい男の子が弾いてたんだ!」



空き地でギターを弾いていたのは、小学校高学年くらいの男のドラゴンであった。



「あの歳でもう路上ライブやってるのか! すごいな……」


「またあいつやってるよ」


「毎日毎日良く飽きないよね」


「下手くそなんだから辞めればいいのに」


「またいつもみたいにちょっかい出しに行こうぜ!」



そう言ってギターを弾いてる少年に近づく同い年ぐらいの男子4人。



「お前! 毎日毎日良く飽きないな! 下手なんだからやめちまえよ!」


「そうだそうだ! 誰もそんなギター聴いてねえよ!」


「こっ、コラー!」


「うわ! なんか変なやつ来た……」


「逃げろー!」



エバに驚いた男の子4人組が走ってその場を去っていった。



「君、大丈夫かい?」


「ありがと! あんちゃん! いつもの事だから平気だよ」


「いつもあんな事されてるの?」


「うん……でも、本当に大丈夫だよ! あんちゃん名前なんて言うの?」



一瞬悲しい表情をした男の子だった。



「俺はエバ! 君は?」


「僕はね、【メドレ=アラン】て言うんだ! 小学校5年生! よろしく」


「アランね! よろしく! 俺も今バンド組んで音楽やってるんだよ」


「えー! エバ兄ちゃん音楽出来るの? バンドでは何やってるの?」


「一様ヴォーカルやってるよ!」


「エバ兄ちゃんすごいね!」


「アランの方がすごいよ! まだ小学校5年生なのに1人で路上ライブしてるんでしょ? どれぐらいやってるの?」


「んー、あと3週間で1年になるかな! 僕なんて全然すごくないよ! いつもみんなに下手くそって馬鹿にされてるし」



こんなに小さな少年が、弦を押さえる左指に豆が出来るほど、1年間も毎日毎日野次に耐えながら1人で頑張っている姿を想像すると涙が出そうになったエバ。



「アラン! 一緒に路上ライブやろう!」


「えっ? エバ兄ちゃん歌ってくれるの?」


「もちろん!そうと決まれば今からやるよ!」


「うん!ありがとうエバ兄ちゃん!」



アランはとっても嬉しそうにギターを弾き始めた。エバとアランは誰も居ない空き地で心の底から音楽を楽しんだ。



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