第24話 キングダム7
キングダムのライブが終わり、順調に進んでいくルーキーフェスもいよいよ終わりが見えてきた。
「長かったルーキーフェスの予選が今終了したぜ! 今から審査員達の評価を集計して、上位4組が決勝進出だ! 結果発表までもうしばらく待っていてくれ」
ガイヤのアナウンスが終わり、生徒達はみな緊張した面持ちで結果発表まで待機していた。
「予選通過出来ますかね」
「やれる事は全部やったわ! 今日が1番良いパフォーマンスだったと思うわよ」
「信じて待つしかねーよ」
「そうだね!完全に出し切った」
エバ達は、今日のライブに悔いがない事、今までで最高のパフォーマンスだったと確信して、結果発表までの間語り合っていた。そして……
「みんな待たせたな! 集計が終わったみたいだぜ? ステージの掲示板に注目してくれ! 決勝進出の4組のバンド名が表示されるぜ」
ガイヤのアナウンスが終わると同時に、会場の照明が消え、掲示板にのみ明かりが灯った。
「見事決勝進出を決めたバンドはこいつらだ!」
掲示板に決勝進出を決めたバンド名が映し出され、会場には声を出して喜ぶバンドや、悔しさに涙を流すバンド、決勝進出など当たり前だという余裕のあるバンド、反応はそれぞれであった。
「……選ばれませんでしたね」
「今の私達の実力じゃ全然ダメってことね」
「そうだな」
「んー……悔しいな」
エバは乾いた笑顔を見せながら涙を流していた。
「まだまだ練習が足りませんね」
「そうね」
アメリとエレナも我慢はしているようだが、目から涙が次々と涙が溢れでていた。
「今の俺達の実力が分かっちまったな。TDIMはこれで終わりじゃねーぞ。ここから始まるんだ。このバンドはまだまだ始まったばかりだからな」
キッドの一言で下を向いていた3人がキッドを見る。掲示板の結果を真っ直ぐに見つめながら話しているキッドの目にも一筋の光が見えていた。
「そうだねキッド。この悔しさは絶対に忘れない」
「私も忘れません」
「私もよ! 忘れてたまるもんですか」
彼らの瞳はもうしっかりと前を向いていた。実際TDIMの評価は決して低いものでは無かった。アメリの繊細なギターとエレナのDJとアポロまで認めさせたラップの評価はとても高かった。だか、逆に言えば今のTDIMはそれしか無いのだ。エバのヴォーカルとキッドのギターは並程度の評価しか貰えていなかった。それはおそらく本人達が1番理解しているだろう。
「お前ら! まだまだルーキーフェスは終わって無いぜ? 悔しいのは分かるが今は決勝に進出したバンドを称えてやろうぜ? みんな拍手!」
ガイヤの一言で下を向いていた生徒達が顔を上げ拍手をし、決勝進出を決めたバンドを皆で称えた。
「よーし! 決勝進出を決めたバンドはさっそく準備に取り掛かってくれ! 予選で敗れた多くのバンドの悔しさを背負って演奏してやれ!」
「頑張れよー!お前らー!」
「私達の分も楽しんでね!」
予選で敗れたバンドも決勝では悔しい思いを忘れるかのように声を出してルーキーフェスを盛り上げた。
「これで、ルーキーフェス終了だ! 今年も最高に盛り上がったな! 最後に今回のグランプリを発表するぞ! グランプリはアポロ様から直接発表だ」
ガイヤのアナウンスの後、突如ステージに現れたアポロ。
「今年もみなさん素晴らしいライブでした。毎年新しい才能を見れる事私はとても感謝しています。先ずはここにいる皆さんを称えます。本当にお疲れ様でした。パチンッ!」
アポロが指を鳴らすと、生徒達全員の頭の上からとても綺麗な雫が舞い降りてきた。その雫が頭に降りかかると、とても温かい気持ちになれたような気がした。
「さて、グランプリの発表ですが。正直驚かされました。高校生でこんなにレベルの高いバンドは久しぶりに見ましたね! ここ数年の話をするならスタークさんが学生の頃を超えてますね!誇って下さいよ? 私がここまで言うなんて珍しい事ですからね! ふふっ」
アポロは心の底から楽しんでいるような笑顔でそう言った。
「話が長くなってしまいましたね。それではグランプリの発表です! グランプリは……【キングダム】の皆さんです! おめでとうございます! パチンッ! パチンッ! パチンッ!」
アポロが指を鳴らすとキングダムはステージ上に移動させられ、キングダムのメンバーの首から豪華なメダルがかけられ、会場に大量の金色の粒子が華やかに会場を舞った。
「皆さん今一度大きな拍手を」
アポロの一言で会場が拍手と生徒達の歓声で大いに盛り上がった。
「それではグランプリを獲得したキングダムから一言お願いします」
アポロがレオにマイクを渡した。
「ご紹介に預かりました、キングダムのレオです。今日ルーキーフェスでグランプリを取れたことをとても誇りに思います。ですが、ここは通過点としか考えてません。俺の目指すところはグラフェスでドレイクを超えることです。必ず超えるので皆さん応援よろしくお願いします」
「言ってくれるじゃねーか!」
「頑張れよレオ! 応援してるからな!」
「頑張ってねレオ様ー!」
レオの挨拶でまた会場が沸いた。 こうして新1年生によるルーキーフェスが終了した。このルーキーフェスで1年生達はこれからの課題や、悔しさ、多くの物を得たでたろう。それはエバ達TDIMもであった。彼等はこれから今まで以上に多くの事を音楽を通して経験する事になるであろう。
「あぁ……本当に音楽は素晴らしい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます