キングダム

第21話 キングダム1


「はぁ……はぁ……ありがとうございました!」


「「「ありがとうございました!」」」



初ライブを終えたTDIMが歓声が鳴り止まないステージを後にした。



「やばかったわね」


「本当に最高の時間でした」


「楽しかった本当に」


「皆んなでやるライブがこんなに最高だとは思わなかったわ。ありがとうな」


「キッド……」


「やめて下さいよ」


「そんな事言うんじゃないわよ……」



キッドの一言で目頭を熱くしてしまう3人。偉大な兄の弟ということもあり、周囲の期待に押しつぶされそうになりながら兄を超える為だけにギターにしがみついて来たキッドは初めてバンドを組み純粋にライブを楽しんでいた。



「今日見た景色を俺は一生忘れる事は無いだろうな」


「俺も」


「私もです」


「こんな最高な思い出忘れるわけないじゃない」


「ただ、今後の課題が見えたのも事実だな」


「そうだね、薄々感じてたけど今日で確信に変わっちゃったかな」


「だよな……頑張ろうぜ?エバ」


「うん! 練習あるのみ」



エバとキッドはライブ中の観客の反応を見て自分達がまだまだレベルが低いとひしひしと感じていた。 実際TDIMがここまでの歓声を得たのはエレナの桁外れなラップのおかげである。 アメリのサポートもかなり高い技術ではあるが、キッドのギターとエバの歌があってこそなのである。ルーキーフェスで今後の課題が見えた2人は今まで以上に練習をすると心に誓ったのであった。



「そろそろ席に戻りませんか? 次のライブが始まってしまうので」


「そうね。ところで次のバンドはどこなのかしら」


「丁度今発表されるみたいだぞ」


「急いで戻らないと」



そう言ってステージを後にしたエバ達。席に着いたと同時に次のバンドが発表される。



「続いてライブを披露するバンドは【キングダム】です。準備を始めて下さい。」


「私達の次にキングダムですか……」


「フンッ! どれほどの物か見せてもらおうかしら」


「「……」」



次のバンドがキングダムだと決まってから顔つきが変わったエバとキッド。レオのオーラに兄を重ねたキッドはキングダムがただのバンドでは無いと予想していた。



「ヒャッフゥー! やっと俺らの出番か! TDIMに良いもの見せてもらったからテンションが上がって仕方がないぜ! 早く行こうぜ? フォー!」



そう言って1人ステージに走っていってしまったロット。



「全く緊張感の無いやつだな」


「それがあいつの良いところでもある。こんな事言うのらしく無いかもしれないけれど、TDIMを見て俺もロットと同じく少しテンションが上がっている」


「レオがそんな事言うなんて珍しいな」


「初めて聞いたかも」


「確かに。でも、ローズもテンション上がってる。」


「そろそろ行くか? レオ」


「ああ。行こうか」



口の端を少し上げながらステージに向かうレオの立ち振る舞いは周りの生徒達の視線を釘付けにした。





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