第20話 初LIVE7


「続いてのバンドはこいつらだー! 男女4人組のTDIM! ルーキーフェス初の女子DJとハープ無しのバンドだ! なんとなんと! ギターのキッド君はあのスタークの弟だそうだ! どんなライブを魅せてくれるんだー? それでは、TDIMよろしく!」



ガイヤのアナウンスと共に、ステージに登場したTDIM。 辺りの照明が消え、TDIMにだけライトが向けられる。



「あれがスタークの弟か」


「スターク様に顔は似てないんだね」


「でも、キッド様もスターク様と違うかっこよさがある」


「スタークの弟もそうだけど、女子なのにDJって大丈夫なのか」



TDIMの登場と共に騒つく生徒たち。



「きたきたー! スタークの弟君! レオのギター越えれるかな?」


「スタークと顔似てないんだな。 レオは良く気付いたな」


「顔が似てるとかそういうのじゃない」


「そんなところで気付けるのレオだけでしょ。私はキッドよりもあのDJちゃんの方が興味あるんだけど」


「マリノがちょっかいだした女の子だ。DJやるんだね」


「確かに! 女子でDJって! TDIMおもしれえー」



キングダムもTDIMに注目する中、いよいよTDIMの演奏が始まる。



(良いわよエバ)


(いきましょう)


(リラックスな?)


(うん!)


「それでは聴いてください」



エバの一言で始まったTDIMのライブ、先頭を切ったのはエレナのDJ。 その音に合わせてステージのライトが激しく動く。エレナのDJに会場の熱が高まって来たタイミングでキッドのギターが入ってくる。 荒々しくも洗礼されたキッドのギターとキッドが口から吐く炎で会場のボルテージは最高潮まで駆け上がった。 エレナとキッドの音にアメリがすかさず2人の上を羽を使って舞いながらサポートに入る事で2人の個性的な音楽が1つに纏まった。



「あいつら良い感じになってるじゃねーか」



ガロンがTDIMの演奏を見てニヤリと笑った。



「ハープが無い分もう少し音が単調になると思ったが、あのエルフ上手くギターでカバーしてるな」


「ああ」


「すげー! TDIM! すげー」


「ロットうるさい」


「DJちゃんお上手だね」



会場がTDIMの演奏に満たされたところでエバの歌が始まる。



「ほーう。頼りねーと思ってたけど、しっかり声出てるな」



ガロンの独り言は会場の熱気に掻き消された。



「あのヴォーカルも初めてのライブなのにしっかり歌えてるな」


「ああ。 だけど、歌えてるだけだ……キッドも確かに上手いが中の上といったところか」


「レオきびしー」


「でも、ローズもそう思う」


「確かにね……インパクトが足りないね」


「そうか? あいつら最高だぜ! フゥーッ! TDIMさいこー!」


「ロットはうるさいだけ」



エバの歌声は決して悪くはない。だが、ここミュージックワールドでは、星の数ほどこのレベルのヴォーカルがいるのだ。それはキッドのギターもそうであった。 スタークの弟というレッテルを貼られ、勝手に周囲の期待が膨らんでいくのである。 生徒達もそれに気付き始めたのか、最初ほどの熱が無くなっていった……しかし、次の瞬間。生徒達……いや、この会場にいる全ての生命体が衝撃を受ける。



「ふふ。これはすごいですね」



あのアポロでさえも声を漏らしていた。



「おいおい……」



自分の生徒でありながらここまでとは知らなかったガロン。鳥肌が止まらない。



「……これは驚いた」


「ここまでとは俺にも分からなかったな」


「DJちゃん! すごい!」


「ロットよりすごいと思う」


「それは言い過ぎだろ!でも、すげーなほんと」



ドワーフでDJと同じ境遇な為ロットは誰よりも感慨深いものがあった。



「やばい!俺エレナさんのファンになったかも」


「私もだよ! 女子だからって正直馬鹿にしてた」


「「「エレナ!エレナ!エレナ!」」」




会場に衝撃を与えた正体はエレナのラップであった。女子とは思えない程迫力があり、会場に居る皆の心を鷲掴みにした。 天才。いや、努力の結果である。今まで彼女が通って来た道のりは決して緩やかな道では無かったであろう。それでも、諦めず、ここまでやって来たからこそ、今会場で1番の歓声を受けているのである。



「はぁ……はぁ……ありがとうございました!」


「「「ありがとうございました!」」」



ライブが終わり4人が横1列に並び頭を下げた。



「「「エレナー!」」」


「「「TDIM! TDIM!」」」


「最高だったぞー!」


「うおおおお!」


「キャー!キッド様!」



ライブを終えた後もしばらく歓声が鳴り止むことはなかった。こうしてTDIMの初LIVEが幕を閉じた。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る