第0条 ニートの始まりは終わりの合図

はぁ、朝からとんでもない目にあった。

何故俺が土に還らねばならんのだ。

大体、この街は俺の街なのに....



そう。ここ咲洲(さきしま)町はこの前、俺が買った。

まぁ、実際にはこの土地を買ったということだ。

引きこもりが街を買えた理由。


それは1口の宝くじから始まった。


なんとなく買った500円宝くじ。

その当時、1等はキャリーオーバーを17回も重ね、100億という馬鹿げた数字となっていたのだ。

そしてその1等を当てたのが、何を隠そうこの俺だ!!


実感のわかない馬鹿げた数字。

当たった当時はただの印刷ミスとしか思えなかった。

何故なら通帳に【百億】と書いてあったからだ。

数字が並んでるところに漢字があったら誰だってそう思うだろ?

そしてその日のうちに銀行から電話があり、

100億の事で銀行まで来て欲しいと言われた。

事務所に通され、お金の使い道やその後の危険性を嫌という程聞かされた。

話を聞くのも面倒だし、働きたくもなかったから

なんとなく俺はこの街を買ってみた。


不労所得とはまさにこの事だ。

バラ色の人生の幕開けだっ!!



そう思っていた。ちょっと前までは....



街を買って地主となった俺は今...





町長をしています。





え?なんで町長なんかをやってるかって?

それは前町長が「地主なんだから町長の座、あーげるっ!」って

訳のわからん理由で町長を丸投げしてきたからである。

丸投げされて改めてわかったが、この町の奴らは変だ!!


セーラー服のじじぃ集団vs虎柄のはばぁ集団。

木魚で踊るサングラス坊主。

ランドセルからミサイルを放つ小学生。

いつも爆発している家。

人間の言葉を話す動物達。

挙句の果てには

「じゆうぅぅぅだぁぁぁ(泣)いゃっほーーーーーーっっ!!!」と

叫び走り回る前町長。。。



自由すぎるというか、無法地帯というか....

この町のヤツら全員イカれてるぜっ!!




そして今もなお、俺に水を撒き続ける姉貴.....


「いや、だからいつまで撒いてんの!?

このままだと俺、風邪ひいちゃいますけど!?」

「いつまでもそんなとこで寝てるのが悪い」

「いや、この状況にしたのはあなた!あなたの強烈なボディブローのせいっ!!」

「責任転嫁とはな。はぁ、町長がきいて呆れる」

「俺はあなたの記憶改ざん能力に呆れているよ?」

「あ"?」

「暴力はんたーいっ」

毎日こんな調子だ。俺は姉貴には勝てん。

そりゃそうでしょ。


何を隠そう姉貴はその昔、

この街1番の暴走族【死紅羅免(シクラメン)】の総長をしていた。

あまりの恐ろしさに周りからは「ゲロ吐かせの般若」と呼ばれていたそうだ。

てか、昔から思ってたんだが...

あだ名ダサくね?あとキモイんだけど。

なんだよ、ゲロ吐かせって。

吐瀉物(としゃぶつ)研究者みたいな名前しやがって。

自らそう呼ばせてた姉貴のセンスのなさに怯えるわっ!


「てか姉貴、頼んでた仕事は終わったのか?」

「終わっているという設定になっている」

「その設定は今すぐ破棄して下さい。で、実際のところどうなってんの?」

「犯人は未だ逃走中。うちの奴らが追ってるけど、まだ捕まらんらしい。」

「じゃあ、なんであなたはまだここにいるんですか?咲洲警察署長さん」

「私が出たら大騒ぎになるけどいいのか?」

「自重して頂き感謝致しますが、

やり過ぎるのを抑えれば良いのではないか?」

「手っ取り早い方がいいだろ」

「はぁ。。。なら今回の件、早く終わらせてくんない?

この件は町長として頼んでる仕事なんだか?」

「チッ、仕方ない....」

そう言って姉貴はバイクへ跨る。

その後、ボーナス出せよと言わんばかりに睨みつけられ、そして走り去った。



そして5分後。

「イィィィヤァァァァァ!!

ごめんなさぁぁぁぁぁぁいい!!!!」

「無能でごめんなさぁぁぁぁい」

「あぁ、署長...いいっ...」

「この人怖ぁぁぁぁぁいッ。

もうしませぇぇん!!!!!!!オエッ」

街中に響き渡る犯人の声.........と警官たちの声。


「......犯人、捕まったか。」


出発して5分で捕まえられるなら、さっさと捕まえて欲しいものだ。

怠慢な姉貴は仕事したくない人間なのだが

理由はわからんが町長命令だけには絶対に従う。

その辺は助かっているのだが、

捕まえる為には手段を選ばないから本当に困る。


姉貴は元ヤンではあるが仁義に厚い人なので

署長に向いていると思い任命した。

すると犯罪率が80%減という驚異的な数字になった。

ここまで減少した理由....それは、、、

さっきまで鳴り響いていた悲鳴たちが全てを物語っている。

姉貴が怖すぎて犯罪すら出来ないというのもあるけど、

直接、姉貴にしごかれたくて警官になる人が増えたのだ。

最近では志願者が多すぎるため、かなり高い水準で審査しているが、

それでも毎年、倍率20倍なんだよなぁ........

みんなド変態なんかな。。



そんなこんなでうちの街は今日も平和なのである。


キーン、キン、ドンッ。バコーン。

「死ね!ババァども!!」

「貴様が死ね!!クソジジイ!!」


ドンドン、ドドドン、ドンドドン。

「今日も奏でる、お経に合わせて、打ち続けてます、ポクポクYeah!!」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッド

「あーーー、ダメだ、、、また失敗すっ、、」

!!!ドカーン!!!



あー、、、、今日も、、

「平和なのかァァァァ(泣)」


もう町長やめてぇぇぇぇぇぇ!!!


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働きたくないので街買いました。 TAIGA @kiriyy

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