おっとそれはギルティだ

OmameO

第1話

時は2020年。世間はラーメン五郎フィーバーに湧いていた。オリンピックなんて何のその。みんなはスポーツよりラーメン。ラーメンより五郎さ。


そして、今日はそんなラーメン五郎のとある日常を紹介したいと思う。


……。


(舞台はラーメン五郎へ移動)


ガラガラ。


店主「いらっしゃいませ~」


今日も、店主の気持ちの良い挨拶が俺を幸せにしてくれる。口には出せないが俺は『またいらっしゃいましたよ!』と心の中で思っている。そして、店に入り一番始めにすることはトッピングのチェックだ。


ラーメン五郎はコールとトッピングを考えるだけで楽しい。俺の通うマイホーム(店)では定期的にトッピングが変更されるから、そのチェックは欠かさない。


俺「おっ、今日はネギかぁ。この前のニラキムチも美味しかったけど、今日はネギで体中ネギ臭くなって満足しようかな(^o^)」


--お金を入れて食券のボタンを押す。


カランと落ちた食券を握りしめ、ラーメン五郎独特の強烈な美味そうな臭いを嗅ぎながら列に並ぶ。ここまではいつものルーチンワーク。ラーメンとご対面するまでの楽しい時間、焦らされる時間。


セックスもイキナリ挿入なんて野暮なことはしないだろ?限界まで堪えて耐えて、体中から液という液が吹き出しそうになるまで待ったほうが気持ちがいい。


セックスの場合は焦らされるとカウパーが出てくるが、ラーメン五郎の場合はジワリと涎が出てくる。そして、その涎・生唾をゴクリ、ゴクリと飲み込みながら悶絶するこの瞬間(ひととき)を楽しめてこそ真の”ゴロリアン”と言えるだろう。


店主「お席空きましたよ」


そうこうしているうちに俺の番がきた。店主に手で進められ着席する。おっと、ここで忘れてはいけないのは、予めセルフサービスの水をコップに入れて座ることだ。ラーメンが着丼してから、他人が食い終わるのを待つ背後霊をかき分けながら、水をもらいに行くのは恥ずかしいからな。


俺「!!!?」


俺「う、うそだろ……。こいつ……」


ふと横を見ると、俺の目に映った光景は目をみはるものだった。


客「……。」


そう、大ラーメンを頼んで後半で死にそうになっている客だ。自分の身の程、胃の程をわきまえずに、大ラーメンを頼むとこういうことが起きる。


客「やべぇ、吐きそう……。」


ラーメン五郎は小ラーメンでも普通のラーメン屋の倍以上の麺量がある。故に、大ラーメンはゴロリアンクラスにならないと頼んではいけない代物だ。


こういう客を俺は5万と見てきた。ゴロリアン界隈で言うとこいつは、間違いなく




「ギルティ」




。必ず残して店を立ち去るだろう。俺は目を瞑り胸の前で十字を切った。


店主「チラッ、(/ω・\)チラッ」


ほら見ろ。店主が気になって目線を飛ばしてる。こうなったらもう最後。いつかやってくる『もう食えない』と確信する時まで冷や汗をかきながら麺をすするだけだ。


俺はこの客の未来を憂(うれ)いながら心を”無”にした。可哀想だが仕方ないんだ。これがゴロリアンの厳しい掟だから。


客「はぁはぁ。どうしよう。自信満々に大ラーメンを頼んだけどこれ以上は無理だ……。周りも冷たい目線をぶつけてくる。」


客「トイレで吐くか、ここでギブアップして逃げるか。くそう。大ラーメンなんて頼むんじゃなかった!」


店主「ニンニク欲しいですか?」


俺のコールの番が回ってきた。


俺「野菜ニンニクアブラ少しで」


昨日は野菜だけコールしたが今日は夜の部、明日は土曜日だからニンニクを入れてもらう。やはりラーメン五郎はニンニクを入れてこそ完成と言えるだろう。隣の客のことは考えず、ここから俺はラーメン五郎に全神経を集中させる。


最高の一瞬(ひととき)を味わうために。




と、その時だった。隣の客に異変が起こった。


客「うわぁぁぁあああああああ」


--ゲロゲロゲロビチビチビチブリブリブリブリィ!!!


盛大な最後だった。客は己の良心の呵責に耐えきれず、ラーメンを残さず食べ進めたのだ。そして、辛(から)くも器(うつわ)に水を限界まで入れると溢れ出すように、体からラーメン五郎を吐き出してしまった。


俺はその信じられない光景を目の当たりにし、脱糞して気絶する前に最後の力を振り絞って言った。





「ギ、ギルティ」

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