第4話

 王都に着いてから二十日後に、私は王宮で一番広い謁見の間に案内されました。

 本当に長く待たされました。

 あまりに長く待たされるので、アレックスの事が心配になってしまいました。

 アレックスは私のために王都近くに潜んでくれているのです。

 あまり長く野宿していると、病気になってしまうかもしれません。


 まあ、魔獣や獣や盗賊の心配だけは必要ありません。

 なんと言ってもアレックスには相棒の竜がついているのです。

 例え相手がどれほど強力な魔獣であっても、霊獣とも言われる竜には敵いません。

 竜に対抗出来るのは竜だけです。

 今現在竜を相棒にしている飛行騎士はいません。


 だから私は一人でも安心して王宮に行けるのです。

 何かあれば、アレックスが竜を駆って王宮に助けに来てくれる。

 王太子がウェセックス伯爵家を切り捨てようとしても、アレックスの心は変わらないし、マーキス男爵も今迄通り味方してくれます。

 アレックスの父親であるマーキス男爵は、義理堅い方です。


 我がウェセックス伯爵家とマーキス男爵家は、長年力を合わせて隣領貴族の介入を撃退し、領地を守ってきました。

 それが例え王家であろうと、変わりはないのです。

 理不尽に領地に介入するのなら、相手が王家であろうとも、断固たる態度で臨まなければなりません。


 私の前には王族の方々がおられます。

 国王陛下と王妃殿下が最上段に座しておられます。

 王太子殿下が一段下の場所のおられるのが異様です。

 国王陛下は殿下を切り捨てる可能性も考慮しているのでしょう。

 ですが、私が舌戦に負けるようなら、ウェセックス伯爵家の方が切り捨てられてしまうでしょう。


「まず最初の申し渡すことがある。

 この度のウェセックス伯爵家とフォーファー伯爵家の件だ。

 両家とも王国の忠臣だ。

 裁定にいささかの私情が入ってもいかぬ。

 よって王太子ジェイコブとウェセックス伯爵令嬢キャロラインの婚約を破棄する。

 同時に王太子のハーレムに入っている、フォーファー伯爵令嬢ペイズリーを実家に帰す」


「何を申されますか、父王陛下!

 不承知でございます!

 何度も申し上げたではありませんか!

 父王陛下も納得してくださったのではありませんか⁉」


 国王陛下も馬鹿ではないようですね。

 アレックスの友、シャビエル卿が動いてくれたのかもしれません。

 シャビエル卿は男爵家の嫡男で、天馬を駆る勇者です。

 王国軍最強の飛行騎士団でも有数の戦士です。

 アレックスと共に竜を求めて旅に出たとも聞いています。

 国王陛下にアレックスが竜を得た事を伝えたのかもしれません。


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