第3話

 フォーファー伯爵は、搦手で攻めてきました。

 王家の力で金鉱山を自分の物にしようとしたのです。

 でも普通は不可能です。

 フォーファー伯爵家も建国からの忠臣ですが、それは我が家も同じです。

 あえて言うのなら、側室とは言いえ私が王太子殿下と婚約していますから、我が家の方が有利です。


 だからフォーファー伯爵は、国王陛下と王太子殿下のハーレムに養女を送り込んだのです。

 事もあろうに、売春婦上がりの女を養女にしてハーレムに送ったのです。

 国王陛下は賢明にも手を付けられず、フォーファー伯爵に送り返されたそうです。

 当然です。

 どのような病を持っているか分からないのですから。


 ですが王太子殿下は、喜び勇んで抱いたそうでございます。

 単に抱いただけでなく、夜も日も明けない状態だと言うのです。

 ペイズリーと言う元売春婦に、完全に籠絡されたと言うのです。

 そんな噂を王都の家臣から伝え聞いた矢先に、王太子殿下から火急の呼び出しがあったのです。


 細心の注意を払わなければなりません。

 だからこそ、直ぐに王太子殿下に直接謁見を申し込むのではなく、事情を国王陛下にお伝えしたのです。

 国王陛下に厳正な対処をお願いしたのです。

 それが謁見の遅れとなっているのでしょう。


 国王陛下は王太子殿下を可愛がっておられると聞きます。

 ですが、それと政は別です。

 王家と言えど、絶対の権力を持っている訳ではありません。

 特に領地争いに関しては、不公平な裁定をする事で、叛乱を誘発させる事もあるのです。


 我が国もそうですが、隣国全てが虎視眈々と領地を奪おうとしています。

 境目と言われる国境周辺の貴族は、常に圧迫と調略の手が伸びているのです。

 ですから毎年のごとく、境目の貴族が寝返りと再寝返りを繰り返しています。

 そうしなければ生きていけない、境目貴族の悲哀もあるのです。

 幸いにして、我が家もフォーファー伯爵家も国境沿いではありません。


 ですが王家が余りに酷い裁定を下すようなら、他国に忠誠を誓ってもいいのです。

 領地こそが全てで、それを守ってこその貴族なのです。

 金鉱山を奪われるくらいなら、王家と一戦交えるくらいでなければ、伯爵家の当主は務まらないのです。

 ですがそれは、フォーファー伯爵も同じなのです。


 ですがこれは、私には好機でもあります。

 王太子殿下が余りに不公平な裁定を下すようなら、我がウェセックス伯爵家から婚約を破棄する事も可能なのです。

 私とアレックスはそれに賭けました。

 同時に、私が無事に王都から逃げ出せるように、十分な準備も整えました。

 

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