第2話

 王都に着いた私は、王都のウェセックス伯爵家屋敷で身だしなみを整え、王宮からの迎えを待ちました。

 決して喜んで待っていた訳ではありません。

 祭りで神に捧げられる羊の心境でした。

 王太子殿下からは強引な呼び出しでしたが、なかなか王宮からの呼び出しはありませんでした。


 父上様が申されたように、国王陛下に事情を御伝えしてよかったです。

 王太子殿下がなにか策謀を巡らせているのは分かっていました。

 本当は父上様も一緒に王都に来れればよかったのですが、隣領のフォーファー伯爵家と境界争いがあり、父上様は領地を離れられないのです。

 始まりは我が領地から金鉱山が発見された事でした。


 間違いなくウェセックス伯爵領です。

 ですがフォーファー伯爵は強硬に自領だと言いたてます。

 どれほど埋蔵量があるか分からない金鉱山です。

 なんとしてでも手に入れたかったのでしょう。

 軍を動員して金鉱山を占領しようとしました。

 ですが父上様も、それくらいの事は予想済みでした。


 軍を動員してフォーファー伯爵軍を迎え討たれました。

 利益を出すための戦いですから、普通は損害を出さないようにするのですが、フォーファー伯爵は意地になったのでしょう。

 後先考えず、多くの犠牲を出したのにもかかわらず、多くの領民を無理矢理徴兵して戦線に投入してきました。


 父上様も仕方なく領民を動員して迎え討たれました。

 忸怩たる思いだったと後で聞きました。

 多くの領民を動員すれば、農地の手入れができなくなり、農作物の収穫量が減ってしまいます。

 働き手の男が戦死したり、一生残る戦傷を受けてしまうと、生産力を回復するのに十数年かかってしまいます。


 ですが父上様にしても、もう後には引けません。

 誇りと面目もありますが、傷つき死んでいった領民を保証するのに、金鉱山からの収入は絶対に必要なのです。

 金鉱山を争うフォーファー伯爵家との争いは、泥沼になるかと思われました。

 ですがここで救世主が現れたのです!


 アレックスが援軍に来てくれたのです。

 竜を駆り、天翔けててアレックスが援軍に来てくれたのです。

 わずか一年で、アレックスは見事に竜を手なずける事に成功したのです。

 竜騎士となったアレックスが援軍に来てくれた事で、戦場の様相が劇的に一変したそうです。


 騎士の乗る軍馬が、背に乗せた騎士を振り落とし、真っ先に逃げだしたそうです。

 それも仕方がない事です。

 どれほど訓練を施した軍馬であろうと、竜に対する恐怖をなくすことなどできないのです。


 フルアーマープレートを装備した騎士が、勢いをつけて落馬したのです。

 その衝撃は相当なもので、全身打撲と数ヶ所の骨折が当然で、何割かの者は首の骨を折って死んでしまったそうです。

 アレックスが竜に乗って戦場に現れただけで、フォーファー伯爵軍は壊滅してしまいました。


 ですが、それでも、フォーファー伯爵は金鉱山を諦めなかったのです。

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